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■服務規律に管理者心得を明記!

      2016/02/21

社内講習のご依頼内容で最近多いのが、「パワーハラスメントとメンタルヘルス対応」です。パワーハラスメントはセクシャルハラスメント(男女雇用機会均等法第11条)と異なり、法的根拠があるわけではありません。平成24年1月30日、厚生労働省・職場いじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告で次のように定義が明確化されましたが、あくまでも「厚生労働省の公式見解」にすぎません。

「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為」

<典型的な6つの行為類型>
1.暴行・傷害 (身体的な攻撃)
2.脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言 (精神的な攻撃)
3.隔離・仲間外し・無視 (人間関係からの切り離し)
4.業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害 (過大な要求)
5.業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと (過小な要求)
6.私的なことに過度に立ち入ること (個の侵害)

よって、セクシャルハラスメントのように就業規則に「やってはいけない遵守義務」として規定して管理職の言動を「萎縮」させることは”過剰反応”だと考えます。
確かに、「許される業務上の指導」と「許されない非人格的または違法な行為」の判断基準を認識することはとても大切です。現に講習の中ではそこに力点を置いて個人の行動特性分析(参照:ストローク・プロフィール・チェックリスト)を根拠にして理解していただきます。
特に前者は、本人のことを思って「叱る・注意する・忠告する・教え諭す・指示する・反対する」であり、後者は、本人のことを考えず「皮肉・いやみ・けなす・八つ当たり・キレる・にらむ・軽視・目をそらす・余計なお世話・仲間外れ・無視・無関心」または「殴る・蹴る・つねる・つきとばす・物をぶつける」となります。
そこで私どもが提案しているのは、服務規律として「管理職の心得」を規定化することです。日頃、トップが口にしていることを付加してもいいでしょうし、管理職としてあるべき姿を具現化してもいいと思います。
管理職たるもの、部下に対してある意味嫌われ者にならなければ、業績成果に結びつく指導も教育も中途半端になると考えます。ほめるだけでは限界があります。
目的は、“働きやすい職場環境をつくる”にあります。ポイントは、職場内の“歩み寄り”です。若手の“過剰反応”を恐れずにぶつかっていく内容を規定化していただきたいと思います。
また、服務規律には、次の3つの従業員の義務を明記することも重要です。
1.職務専念義務・誠実労働義務2.業務命令遵守義務3.企業秩序遵守義務
参考までに規定例を添付しておきます。

(管理職の従業員に対する心得)
第○条 課長以上の管理職は従業員に対して次の姿勢で接するものとする。
1,管理職は、部下を公平、適切かつ冷静に助言または指導を行い、部下の勤務意欲および職務能力の向上に努めること。
2,管理職は、部下の業務状況、勤務態度および技能等に常に意識を傾け、部下を正しく評価できるようにし、適宜取締役に報告すること。
3,管理職は、部下がスムーズに業務ができるようにしっかりと準備をして打合せや業務指示を行い、担当職場全体の業務が円滑かつ効率的に遂行されるように尽力すること。
4,管理職は、自らの失敗を部下に転嫁したり、部下の功労を自らのものにしたり、立場を利用して不当な要求をする等、部下の信頼を失う行為を行わないこと。
5,管理職は、部下に対して適宜報告、連絡、相談および確認を求め、業務が確実に遂行されるように配慮すること。
6,管理職は、服務規律に反する行為をした部下に対しては必ず注意または指導を行いその改善をさせること。改善ができない場合には取締役に報告し、指示を仰ぐこと。また、部下を注意または指導する場合には毅然とした態度で臨み、陰湿になったり、中傷的な言辞を弄したりして不要な恨みを買うようなことのないようにすること。
7,管理職は、部下の労働時間、業務内容、健康状況および安全の管理をしっかりと行い、取締役からの求めに応じて速やかに報告できるようにしておくこと。

(順守義務)
第○条 従業員は、次の事項をしてはならない。
1,会社の承認を得ないで、他の職業に従事すること。
2,会社の内外を問わず、会社の名誉または信用を傷つけること。
3,ブログ等ホームページ上の活動内容やインターネットへの書き込みにおいて会社の経営政策や業務等について事実に反し使用者等会社関係者を誹謗中傷したり、会社の許可なく会社の名を使用すること。
4,業務上の機密事項、会社の不利益となる事項を他にもらすこと。
5,就業中みだりに職場を離れ、雑談等、職場内の風紀、秩序を乱すこと。
6,上司の承認を受けないで、私用のため就業時間中に外来者と面会すること。
7,自己の職務上の権限を越えて、独断的な行為をすること。
8,職務に関し、金品の借用または贈与の利益を受けること。
9,他の従業員と金銭貸借をすること。
10,会社内において、組合運動、政治活動示威行進、その他会社の業務と関係のない集会等を開くこと。
11,無断で会社内で印刷物を配布し掲示すること。
12,就業中、業務に関係のないことに時間を費やすこと。
13,会社内において、私物の制作をなし、私のために読み書きをすること。
14,会社の器具、備品の扱いを疎かにし、消耗品、印刷物を浪費し、貸与物品の保管を怠ること。
15,許可なく職務以外の目的で、会社の設備、車両、機械器具、その他の物品を使用すること。
16,他人に前各号に掲げる事項に反する行為をさせたり、または反するように教唆、扇動すること。
17,現在、暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業・団体、総会屋、社会運動等標ぼうゴロ又は特殊知能暴力集団等その他の反社会的勢力の構成員、及びその他これらに準ずる者(以下「暴力団員等」という。)に該当せず、又は暴力団員等でなくなった時から5年を経過しない者に該当せず、また、次の各号に該当せず、かつこれらの行為を将来にわたっても行わないこと。
1 暴力団員等に資金を提供し又は便宜を供与するなど暴力団員等の活動に荷担し又    はそれらの活動を助長する行為を行うこと。
2 暴力団員等と社会的に非難される関係を持つこと。
3 自己又は第三者を利用して、自己又は関係者が暴力団員等である旨を伝えるこ     と。
18,その他前各号に準ずる行為をすること。
(2)従業員は相手方の意に反する性的言動により、その対応によって、仕事を遂行する上で一定の不利益を与える行為または就業環境を悪化させる行為(セクシュアルハラスメントという)に該当するかまたは該当すると思われる次の言動を行ってはならない。
1,人格を傷つけかねない、あるいは品位をけがすような言葉遣いをすること。
2,性的な関心の表現を業務遂行に混交させること。
3,ヌードポスターや卑猥な写真・絵画等を見ることの強要や配布・掲示等をすること。
4,相手が返答に窮するような性的な冗談やからかい等をすること。
5,執拗な誘い、性的な噂、性的な経験談を相手の意に反して話したり、聞いたりすること。
6,性的関係の強要、不必要な身体への接触、強制猥褻行為・強姦を行うこと。
7,その他相手方の望まない性的言動により、円滑な職務の遂行を妨げると判断される行為。

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