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■年金に関する選択は慎重に(金澤)

      2016/02/21

先日、久しぶりに遠方に住む祖母に会いに行きました。
色々と世間話をする中で、年金の話が出たので詳しく聞いてみると(職業病)
国民年金を60歳から繰り上げ支給していたようでした。

そして祖母曰く、
「なんか社会保険事務所(当時)の人が、繰り上げると減額されるけど、
また元の額に戻るとか言ってたのに、ず~っと少ない金額のまんまだもんで、
話が違うじゃないのって思ってるのよ」とのこと。

ご存知な方も多いと思いますが、本来65歳から受給開始の国民年金を
5年間繰上げて60歳から受給すると、繰上げ月数1ヶ月ごとに0.5%の年金が減額されます。
つまり、5年(60ヶ月)繰り上げると、30%減額されます。

そしてその減額された金額は一生そのままで、65歳に到達したからといって
本来の金額に戻る訳ではありません。
これが繰上げ支給の最大のデメリットですね。
よって、いずれ65歳から支給されている人たちに累計額で追い抜かれてしまいます。
(具体的には76歳から逆転されてしまいます)

「体が元気なうちに年金をもらって、好きなように使いたい」というニーズも
あるでしょうから、繰上げ支給制度にももちろん意義はあるのですが、日本人の平均寿命を
考えると、(特に女性は)よくよく考えて選択していただきたいです。

祖母の場合、当時の社会保険事務所の窓口担当者が間違えてアドバイスしたのか、
正しく説明したのに祖母が勘違いしたのか分かりませんが、実際に祖母が繰上げ支給という
選択を後悔している様子を見ると、年金に関わる仕事は、アドバイスひとつで
人様の老後の生活に影響を与えてしまうのだと実感し、身が引き締まる思いでした。

確かに年金制度はものすごく複雑で、これを本当に完璧に全て理解している人が
日本に一体何人いるのだろうかと思ってしまうほどです。(繰上げの話は基礎ですが・・・)
知らないままに「本来もらえるべき年金」をもらっていない人もたくさんいます。

例えば、企業年金基金に加入していた会社員の方は、国の年金の一部を
基金が代行しているので、60歳になったら「年金事務所」と「当時の基金」の
両方に裁定請求する必要があります。

しかし、そのどちらかにしか裁定請求していないために、もう一方から支給されるべき
年金をもらっていないという非常にもったいない状態の方がいるようです。
もし当時の基金が既に破綻してしまっているならば「企業年金連合会」に裁定請求する
必要がありますので、注意が必要です。

また、厚生年金・国民年金を繰上げ支給した人が、その後雇用保険の基本手当を受給し始めた
ために、せっかく繰上げた厚生年金が支給停止になってしまったというトラブルもあります。
(国民年金は基本手当を受給しても支給停止されませんが、繰上げは厚生年金と国民年金
必ず同時に繰り上げる必要があるので、国民年金のみ繰上げということはできません)

繰上げをお考えの方は、まず基本手当を受給し終えてから年金を繰上げ支給してください。
せっかく繰上げた年金をわざわざ支給停止にするのはもったいないです。

年金は個人の加入履歴や現在の給与、雇用保険からの給付など、色々な要素が絡み合うため
本当にケースバイケースであり、その人の現状をしっかり把握した上で一番良い選択肢を
考える必要があります。
まずはご自身の加入記録を確認するために、年金事務所へ行きましょう。

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