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だまし討ちのような派遣打切りは不法行為となるか?

      2016/02/23

パナソニックエコシステムズ事件 【名古屋高判 2012/02/10】
原告:派遣社員2人  /  被告:派遣先会社

【請求内容】
派遣労働者2名が、派遣先Y社との黙示の無期雇用契約が成立していたとして地位確認や慰謝料の支払いを求めた。

【争  点】
【原告ら】違法派遣による黙示の無期雇用契約は認められるか?【裁判所】派遣切りの仕方が不法行為にあたるか?

【判  決】
黙示の無期雇用契約は認められないが、派遣切りの仕方が著しく信義にもとり、不法行為成立し慰謝料支払い命令。

【概  要】
派遣労働者X1,X2はY社に派遣されて就労していたが、平成21年3月末に雇止めになった。Xらは、担当業務が26業種に該当しないことを理由に「これは違法派遣であり、Y社との間に黙示の無期雇用契約が成立している」と主張して提訴した。一審(名古屋地裁)ではY社との直接雇用が成立しているという主張は退けたが、突然の契約打切りやその手続きが信義則違反による不法行為であるとした。(※同事件の地裁判決は労働判例No.40参照)

【確  認】
【政令26業種】派遣受入期間の制限を受けない業務(=常用雇用の代替のおそれが客観的に低い業務)
① その業務を迅速かつ的確に遂行するために専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務
② その業務に従事する労働者について、就業形態、雇用形態等の特殊性により、特別の雇用管理を行う必要があると認められる業務
【自由化業務】派遣受入期間に制限がある業務(原則1年。過半数代表の意見聴取により最長3年まで延長可能)
派遣受入期間があるのは、派遣先において派遣労働者が正社員の常用雇用の代替として利用されることがないようにするためである。

 

【判決のポイント】

■原告側の主張■
政令26業種でないにも関わらず、受入期間の制限を越えて就労させたことは違法派遣であるため、派遣先Y社との間に黙示の無期雇用契約が成立しているとして、Y社に無期直接雇用するように求めた。

■裁判所による論点の修正■
例え違法派遣であったとしてもX1,X2とY社との間に黙示の雇用契約が成立するということはできないが、原告側がこの主張にこだわったため、裁判所により「派遣切りの仕方」に論点の軸が変更された。

<問題となった派遣切りの仕方>
・X1は、複雑で高度に専門的な業務に従事しており、自己に代わる人材が他にいないほどの重要な人材であった。
・派遣先も雇用の継続に配慮してくれており、Y社への派遣が近い将来打切りになるとは予想だにしていなかった。
・上司から、他の部署から移籍してきた正社員に対し、Xが休んだときに困るのでXが行っている業務内容のすべてを教えるように指示され、Xがその指示に従って、自己がそれまでの勤務で培った知識、経験、ノウハウのすべてをその正社員に伝授し、自己の代わりが務まる人材として育成したところ、更新期間のわずか1か月前になって、突然あたかも騙し討ちのようにXを狙い撃ちにして派遣打切りを通告され、派遣元から解雇されるに至った。
⇒ あたかも騙すような形で代替人材を育成させて突然派遣切りをしたのは著しく信義にもとる行為で、不法行為が成立するとして、X1に慰謝料100万円を支払うようY社に命じた(X2へは派遣切りへの説明不足で30万円支払)

【SPCの見解】

■今回は、原告の主張と判決の内容にズレがあるという珍しい(本来はルール違反)判例であるが、この判決は既に最高裁にて上告棄却で確定している。派遣法改正以前は「違法派遣の場合は派遣先との直接雇用が成立する」という主張は通らなかったが、今後は「労働契約申込みみなし制度」の対象に該当するような違法派遣の場合は、直接雇用が認められてしまうだろう。さらに本件で注目すべきは、派遣切りの仕方の酷さについて派遣先に慰謝料支払い命令が出たという点である。改正派遣法でも「派遣労働者の保護」をうたっており、今後はさらに、不当な扱いを受けた派遣労働者を救済しようとする傾向が強まることが予想されるため、十分注意して欲しい。

労働新聞 2013/1/21/2905号より

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