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業務外の非行についての対応

      2025/05/19

弊社では毎週月曜日の朝礼時にひとつの裁判例を取り上げて、各々が意見を出し合う判例勉強会を実施しています。

 

今週の裁判例は、業務外の非行により県の迷惑行為防止条例違反にて逮捕されたことにより、懲戒解雇となった従業員が懲戒解雇は無効として地位確認を求めた事案でした。

 

業務外の非行為が発生した際に、企業としてどのように対応すべきか判断に迷うところかと思います。

 

事案の発生から懲戒処分に至るまでには流れがあります。

 

まず事実関係の調査が必要となります。被害者を含む関係者へのヒアリング、事実を裏付ける書類の確認等を行います。この際に対象者へ弁明の機会は与えられるようにしてください。次に、明らかになった事実を基に、就業規則上どの懲戒事由に当たり得るか、懲戒の種類はどれが妥当か、過去の処分歴等から検討します。その後、就業規則の所定手続きを踏み、懲戒処分の内容を決定します。

 

多くの企業は就業規則上、企業の名誉や信用を貶めたことや刑罰法規に触れる行為を懲戒事由としており、業務外の私生活上の非行為についても懲戒処分を行なっています。これは、過去にあった裁判の判断基準から影響を受けています。

 

実際に懲戒処分を行う際のポイントをいくつか挙げていきます。

 

・懲戒対象行為を明確に特定できているか

・就業規則に懲戒対象として明記された行為であるか

・過去の懲戒歴はどうなっているか

・企業への影響があったか

・刑罰法規に触れる行為であったか

・対象者の反省や示談、弁償状況はどのようなものか

 

さらに懲戒解雇に踏み切る場合には、対象者にとってあらゆる有利な事情を勘案しても、懲戒解雇しか選択し得ないほどの非行為といえるかも判断のポイントとなります。

 

始めにお話しした裁判例について、地方裁判所は懲戒解雇は無効であると判断しました。刑事手続きについて報道がされておらず、社会的に周知されることはなかったと認められたこと、対象者に懲戒処分歴がなかったこと等を考慮された為です。この場合、無効であると判断された期間までの給与の支払いが発生し、企業にとっても負担がかかるところとなります。こういったことからも懲戒解雇を選択する際には慎重な対応が必要であることが窺えます。

 

業務外の非行を行った従業員への処分としては、企業秩序に直接の関連を有するもの、社会的評価に及ぼす影響の度合い等から懲戒解雇以外にも出勤停止など、より軽い処分にとどめるか、退職勧奨、普通解雇も検討する必要があるでしょう。

 

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