スキマバイトについて
2025/05/12
最近「スキマバイト」をよく耳にするようになりました。スキマバイトとは、スキマ時間(空き時間)に働くことができる短期・単発のアルバイトのことです。1日や時間単位で働け、履歴書や面接なしで登録できるアプリが多く利用されています。このスキマバイトの導入は、企業にとって柔軟な労働力の確保手段として有効ですが、運用にはいくつか注意点があります。
安全衛生教育の徹底
まず、労働衛生教育の実施が重要です。短時間労働者であっても、労働安全衛生法に基づき、必要な教育を行い、職場での安全を確保することが求められます。特に、業務内容に応じた安全対策や健康管理についての指導を徹底することが重要です。
教育を行うことが必要な項目としては、以下が挙げられます。(労働安全衛生法第59条、労働安全衛生規則第35条)
(1)機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること。
(2)安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること。
(3)作業手順に関すること。
(4)作業開始時の点検に関すること。
(5)当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。
(6)整理、整頓及び清潔の保持に関すること。
(7)事故時等における応急措置及び退避に関すること。
(8)前各号に掲げるものの他、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項。
労災の対応
最近は、スキマバイトで業務中に災害が発生するケースがあり、労災の対応についても注意が必要です。派遣労働者とは異なり、直接雇用となりますのでスキマバイトであっても、労働者災害補償保険法に基づき、労災保険の適用対象となります。
労働保険料の計算
さらに、労働保険料の計算に含める必要がある点も重要です。スキマバイトの労働者も、雇用保険や労災保険の対象となるため、労働保険料の計算に含める必要があります。通常の労働者の給与のみならず、スキマバイトの労働者の賃金も含めて労災保険、雇用保険料の算定をお願いします。
労働条件の明示
労働契約締結時に労働条件を明示し、労働者に対して適切な情報提供を行うことが求められます。これには、賃金、労働時間、休憩時間、休日などの基本的な労働条件が含まれます。一部のスキマバイトのアプリ上では、労働条件通知書を作成・配布できる機能もあるようです。
就業規則の周知
常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則を作成し、労働者に周知する義務があります。スキマバイトの労働者にも適用される就業規則を整備し、労働者に対してその内容を周知することが求められます。
まとめ
スキマバイトは、企業が直接労働者を雇用する形態が多く、派遣会社を介する場合とは異なり、労働者に対する直接的な責任を負うことになります。直接雇用の労働者としての意識を持ったうえで、労働者に対して適切な労働環境を提供し、労働者は企業のルールを遵守する義務があることを互いに認識したうえで、双方が責任を果たすことで信頼関係を築くことが重要だと思います。これからも利用者が多くなると思われる「スキマバイト」ですが、適切な運用を行うことで、企業にとっても労働者にとっても有益な制度となることを願います。