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賃金デジタル払い導入のポイント

      2025/05/07

令和5年4月1日に施行された「賃金のデジタル払い」の資金移動業者として、新たにauペイメント(株)が指定されました。厚生労働省の指定を受けた資金移動業者のみがデジタル払いに関与できるとされていて、現在4社目の指定になります。

そもそも、労働基準法24条1項には「賃金は通貨で支払わなければならない」と定められています。これは価格が不明瞭で換価にも不便である現物給与を禁止するための規定ですが、使用者が労働者の同意を得た場合には、①労働者が指定する預貯金口座への振込み②証券総合口座への払込み③指定資金移動業者口座への資金移動ができるとされています。③の賃金のデジタル払いの導入にあたって、ポイントをまとめました。

1.厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の確認

厚生労働省ウェブサイトに指定資金移動業者一覧が掲載されています。令和7年4月現在では、PayPay給与受取、COIN+(スタンダード)、楽天ペイ給与受取、au PAY 給与受取のサービスが使用できます。デジタル払いで賃金を受け取る口座は支払いや送金のための口座であり、預貯金用の口座ではありません。どの指定資金移動業者のサービスを導入するのかは、労働者のニーズを踏まえ、以下の点をご確認ください。

・口座残高上限の設定金額*

・1日あたりの払い出し上限の設定金額*

※上限の金額を引き上げることはできません。資金移動業者によって異なります。

・労働者や雇用主の手数料負担の有無と金額

・指定資金移動事業者との契約締結の要否

なお、複数の指定資金移動事業者を選択することもできます。また、賃金の一部をデジタル払いにして、残りを銀行振り込みにすることもでき、デジタル払いを選択後、銀行振り込みに変更することも可能です。

2.労使協定の締結等

賃金のデジタル払いを導入するにあたり、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者と労使協定を締結します。下記の事項を記載してください。労使協定例が厚生労働省のwebサイトに掲載されています。

(1)対象となる労働者の範囲

(2)対象となる賃金の範囲

(3)取扱指定資金移動業者の範囲

(4)実施開始時期

3.労働者への説明と同意取得

労使協定を締結した上で、賃金のデジタル払いを希望する労働者に対して、デジタル払いに関する必要事項を説明します。そして、労働者から個別に同意を得ます。同意書の様式例をご活用ください。

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001017091.pdf

労働者への説明は指定資金移動業者に委託することもできます。ただし、委託した指定資金移動業者が労働者への説明を怠った場合には、雇用主は労働基準法令に違反することになりますので、注意が必要です。また、説明を委託した場合も雇用主自らが同意を得てください。同意は書面でなく電磁記録によることも可能です。※労働者本人の同意がない場合や賃金のデジタル払いを強制した場合、雇用主は労働基準法違反となり、罰則の対象になり得ますのでご注意ください。

4.賃金支払いの事務処理の確認・実施

指定資金移動業者によって賃金支払いの手続きが異なります。支払方法や、雇用主の事務処理期限等ありますので、各サービス内容をご確認ください。

〇その他留意点

指定資金移動業者の指定が取り消された等の場合には、対象の労働者が指定する別の方法によって、それ以降の賃金の支払いを行ってください。また、既に雇用主がデジタル払いの事務処理を行っていた場合は、当該資金移動業者に確認してください。速やかに対応する必要があります。

詳細は厚生労働省のwebサイトをご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03_00028.html

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