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社会保険の適用拡大(改正)

      2025/06/30

「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が、6月13日に成立しました。今回はその改正の中から、社会保険の適用拡大についてご紹介いたします。

  • 適用拡大の概要

〇賃金要件と企業規模要件撤廃(短時間労働者)

短時間労働者の適用要件のうち、賃金要件を撤廃するとともに、企業規模要件が段階的に撤廃されます。

ここでいう短時間労働者は、同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の1週間の所定労働時間および1か月の所定労働時間が4分の3未満の労働者です。この4分の3要件を満たさなければ社会保険の被保険者となりませんが、以下の要件を全て満たす場合は被保険者になります。

〇4分の3未満短時間労働者の適用要件

  • 特定適用事業所に勤めていること(現在は社会保険の被保険者が51人以上の事業所)
  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 学生でないこと
  • 所定内賃金の月額が88,000円以上であること
  • 雇用期間が2カ月超見込まれること

今回の改正で、①の規模要件と④の賃金要件が撤廃されることになります。①の規模要件は令和9年10月1日から段階的に人数を減らしていき、令和17年10月1日には撤廃されることが決まりました。現在51人以上、令和9年10月から21人以上、令和14年10月から11人以上、令和17年10月から10人以下となります。人数要件の撤廃によって、社会保険が適用されている事業所であれば、ほとんどの労働者が社会保険の被保険者となることになります。

④の賃金要件の撤廃時期については、3年以内の政令で定める日とされていますが、全国的に最低賃金が上がってきていますので、撤廃の時期は早まると言われています。

〇個人事業所の非適用業種の解消

法人の場合は、業種にかかわらず適用事業所とされますが、個人事業所の場合は常時5人以上かつ適用業種である場合に適用事業所とされていました。適用から除外されていた*非適用業種が令和11年10月から適用業種になります。

*非適用業種…農業、林業、漁業、宿泊業、飲食サービス業 等

ただし、2029年10月時点で既に存在している事業所は当分の間、対象外とされます。常時使用する労働者が5人未満の個人事業所は現行通り、適用の対象外です。

〇社会保険の適用拡大の対象となる短時間労働者への支援

企業規模要件の見直しにより、新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者に対し、3年間事業主の追加負担により、労働者が負担する社会保険料を軽減できる特例的な措置が実施されます。事業主が追加負担した保険料について、国がその全額を支援するとされています。その他、事業主向けの支援も検討されています。

社会保険の被保険者になると、将来受給する年金額や医療給付等が手厚くなりますが、社会保険料を負担していかなければなりません。今回の適用拡大により、特例的な支援もされますが、時限措置であるため、社会保険の適用を検討されている個人事業主様は今回の改正も考慮した適用の判断をお願いいたします。

参考URL

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00017.html

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