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不更新条項付き契約での雇止め(労働契約法改正)

      2016/02/23

本田技研工業事件 【東京地判 2012/02/17】
原告:期間工X /  被告:会社Y

【請求内容】
約11年間有期雇用契約の更新、退職、再入社を繰り返した期間工Xが雇止めは違法無効として地位確認等を求めた。

【争  点】
雇用契約締結前に説明した上で、経営悪化を理由に期間契約社員全員を雇止めしたことは違法か?

【判  決】
Xは異議を述べずに退職届を提出し、慰労金や精算金も受領しており、不更新条項は公序良俗に反しないとした。

【概  要】
期間工Xは、約11年にわたりY社との間で「有期雇用契約の締結・契約期間満了退職・再入社」を繰り返していたが、平成20年11月にY社は経営悪化から期間契約社員全員を雇止めすることとした。契約社員には、雇用契約締結前に説明会にて更新なしの契約であることを説明し、「不更新条項を定める有期雇用契約書を締結できるならば契約書を提出してほしい」と伝えた。Xはこの契約書に署名したが、退職後、期間満了による雇止めは違法無効と訴えた。

【確  認】
<有期雇用契約なのに、期間満了による雇止めが許されない場合があるのは何故か?>
⇒契約上は有期雇用であっても、以下の様な「雇用継続への期待」を抱いてもやむを得ない様な事情がある場合、「その期待権を保護する」という意味あいから、期間満了であっても雇止めが解雇権濫用とされることがある。
【雇止め法理】雇止めには「客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性」が必要とされる理論。
1)実質無期契約タイプ・・・ほぼ自動的に更新されている等無期契約と実質的に異ならない状態と認められた場合
2)期待保護(反復更新)タイプ・・・相当程度の反復更新から、雇用継続への合理的な期待が認められる場合
3)期待保護(継続特約)タイプ・・・反復更新はないが、雇用継続への期待が契約時から生じている場合

 

【判決のポイント】

【ポイント①】Xが「雇用継続への期待」を抱いてもやむを得ない様な事情があったか?
⇒Y社は平成20年9月、深刻な世界経済の停滞等の事態が生じつつあったにもかかわらず、Xの契約更新の上限期間を1年から3年に延長したことから、Xが引続き平成23年5月頃までの勤務継続に期待したことはやむを得ない。
【ポイント②】退職届の提出は、雇用継続に対する期待利益(期待権)の放棄か?
<期待権があったにもかかわらず、雇止め(不更新条項)が有効とされた理由>
①Xは本件雇用契約の締結前に雇止め(不更新条項)について説明を受け、雇止めはやむを得ないと受け入れたこと
②Xは本件雇止めが、これまでのように「空白期間経過後の再入社」が期待できるような雇止めではないことを十分理解して任意に契約書に署名したこと
③雇用契約締結から雇止め実行までの間、Xは雇止めについての不満や異議を述べたり、雇用継続を求める等をせず退職手続きを整然と進め、Y社から慰労金及び精算金を受領したこと
⇒以上のことから、Xは説明会開催日時点において、雇用継続に対する期待利益を確定的に放棄したと認められる。よって、不更新条項は公序良俗に反せず、解雇権濫用法理の類推適用の前提を欠くとした。

<労働契約法の改正>(平成24年8月10日に公布)(2のみ公布日から施行。1・3は公布日から1年以内に施行)
1)無期労働契約への転換  有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、無期労働契約となる。
2)「雇止め法理」の法定化
3)不合理な労働条件の禁止

【SPCの見解】

■平成24年8月10日に改正労働契約法が施行された。改正ポイントは上記の3つだが、特に1の「5年で無期雇用転換」が最も影響が大きいと考えられる。5年のカウントは施行日以降に開始する労働契約が対象だが、早急に企業としてどのように対応していくか考える必要があるだろう。また、例え5年経過していなくとも「雇止め法理」の法定化により、「合理的な理由と社会通念上の相当性」のない期間満了による雇止めは無効となるので注意が必要である。その他、平成25年4月から「高年齢者希望者全員継続雇用」、平成28年10月から「社会保険のパートタイマーへの適用拡大」など企業にとって厳しい法改正が続くため、あらゆる方面に対応した制度設計が求められる。

労働新聞 2012/8/27/2886号より

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