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心の正体

   

今月の雑感は、中村天風氏の「心の正体」をとりあげます。

氏曰く、心には二色あると。

一つは、肉体に属している心、二つは、精神生命に属している心

さらに、細かく分けていくと、肉体のほうの心が三つ、精神のほうの心が二つあります。

肉体のほうの三つというのは、第一が物質心、第二が植物心、第三が本能心。

精神生命のほうの二つというのは、第一が理性心、第二が霊性心。

今回は、物質心、植物心、本能心をみていきます。

先ずは、物質心。物質心は、物すべてに存在している。物の芯をなしているのが物質心。

「物質心は心を働かす意識領域に飛びだしてこないんです。だから、物の芯として、でんと鎮座しているだけでもって、何の活動状態にも入らない心なの。しかし平素は、活動状態に入らなけれど、生まれるときにはこの物質心が一番先にできて、そして肉体がつくられて、死ぬときには、一番最後までこの物質心がとどまって、物質心がなくなったときに、あなた方の体は水になっちまうんです。」

次に、植物心。この植物心があればこそ、お互いの五臓六腑はこの心の命令で働いています。

「あなた方は、体の中に、胃だ、肺だ、心臓だ、肝臓だ、膵臓だ、腎臓だ、副腎だ、というものがあるってことはおぼろげながら知っているが、意識領域にでてこないからいま現在、どの臓器がいちばんよけいに働いてるなんてことはちっとも感じてないでしょ。ごはん食べたての三時間ぐらいは胃が消化のために努力をしている。そして食べたものをあの十二指腸という細い管を通れるような麦芽糖状態にしてくれて、そして、十二指腸が活動している間に絶え間なく、胆のうや膵臓から、消化液が分泌されて、十二指腸から小腸を通って大腸へ行って、血となし、肉となし、骨となすという働きをおこなって、それをグングン、グングン、体の中に吸い込んでいる。そして、いらないものはかすにして直腸に送って、直腸のほうはやり場がないから瓶の中へ送るというようなことをしてるってことを意識しないだろ? あなた方がべつにお小遣いやらなくたって、かわいがらなくたって、何にも干渉する必要がなく、生きている間はちゃんとその生命を守って働いてくれてる。隠れたる縁の下の力持ちをする心が植物心。ここに忘れてはならない大事な注意がある。それは、あなた方の大部分の、何かといえばすぐ怒ったり、悲しんだり、恐れたり、憎んだり、そねんだり、ねたんだり、悶えたり、悩んだり、苦しんだり、迷ったりするような心になると、あなおそろしい、植物的に大きなショックが与えられる。すると、ふつうにしておけば極めて完全に働いてくれる植物心、ならびにその支配を受けている自律神経に仕事がちっともはかどらなくなってしまうんです。だから、どんな場合があっても、平素、心を消極的にしちゃいけないという理由がそこにあるんです。とりわけ、病のときに心を消極的にすると、治る病が断然治らなくなってしまう。」

第三は、肉体に付随している本能心。この本能心というのは、肉体生命を生かすために、常に意識領域にでて活動している心です。これは人間ばかりでなく、およそこの世に生きとし生ける動物はみんなこの心をもっています。生きるのに必要な働きをおこなっている心だから、動物心ともいいます。この本能心というものは、盛んに意識領域の中にあらわれて、我々の命を生かすために必要な要求というものを、遠慮会釈なくその心にあらわして活動している心です。食欲、睡眠欲、性欲が本能心です。

「人間の本能心の中は、自分の肉体を生かすのに役に立つ働きをしてくれるものと、自分の肉体を、また自分の心をより悪くするような、役に立たないやつがまざっているような状態で、さながら日々がある。それが整理されると、いらないものはいらなくなっちまうから、いるものだけしか残らない。そうすると、本当の人間としての幸福が得られるわけで、それを金をこしらえるとか、名誉でも高めるとか、地位でもできればというふうに思うから、とんでもないことなんです。人間の心の中に低級な動物的欲望や劣悪な動物的感情情念があるかぎりは、我々の心の中に平和と平静はこないんであります。」

次回の雑感では、精神のほうに付随している二つの心、理性心と霊性心について触れていきます。お楽しみに。

 

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