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短時間労働者の賞与が正社員より少ないのは差別なのか?

      2016/02/23

ニヤクコーポレーション事件 【大分地判 2013/12/10】
原告:運転手X /  被告:Y社

【請求内容】
約8年間にわたり有期労働契約を更新したXは、雇止め無効と労働条件の差別的取扱いによる損害賠償を請求した。

【争  点】
①Xは「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」に当たるか?
②Xへの労働条件差別は不法行為に該当するか?

【判  決】
Xは「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」であり、正社員との待遇の差は差別的で不法行為にあたる。

【概  要】
Y社にて約8年にわたり有期労働契約を更新して勤務し続けてきた準社員であるトラック運転手Xが雇止めされた。Xは、本件雇止めには合理的な理由も社会通念上の相当性もなく無効であるとして、雇用契約上の地位確認を請求した。またXは、自身の労働条件が正社員と比較して差別的である(賞与が年間40万円少ない点や週休日の日数が少ない点)ことはパートタイム労働法第8条違反であり、不法行為による損害賠償を請求した。

【確  認】
【パートタイム労働法】この法律が保護の対象としいる「パートタイム労働者」とは、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者(正社員)の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」である。さらに、同法第8条では、以下の要件に当てはまるパートタイム労働者を『通常の労働者と同視すべき短時間労働者』と定義して、通常の労働者(正社員)と差別してはならない旨、定めている。
〈1〉職務の内容が通常の労働者と同一である
〈2〉人材活用の仕組みが通常の労働者と同一である
〈3〉無期労働契約を締結している(※反復更新によって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる有期契約を含む)※この条件は、廃止されることが決定している。

 

【判決のポイント】

■Xはパートタイム労働法の差別禁止の対象である「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」にあたるか?
要件〈1〉については当事者間で争いがなかった(正社員と同一の職務内容であると会社も認めていた)ため、その他の要件について検討されている。
〈2〉の要件について、会社側は「就業規則上、正社員には『配転・出向』の義務付け条項があるが、準社員には 義務付けがない点で、人材活用の仕組みが同一ではないと主張したが、Y社は正社員の配転実施例は少なく、準社員との間で大きな差があったとはいえないこと等から、人材活用の仕組みは正社員と同一であると認定した。
〈3〉の要件については、Xは有期労働契約が反復更新されているため、「期間の定めのない労働契約と同視することができる者」と認められ、「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」の要件を満たすと判断された。

■Xの労働条件は、パートタイム労働法第8条の禁止する「差別的取扱い」にあたるか?
<Xと正社員との労働条件の差>
①年間賞与額が正社員よりも40万円少ない点
②週休日の日数が正社員に比べて少ない点
⇒ 判決ではこれらの差は「差別的取扱い」であり不法行為を構成するとして、「賞与の差額分」及び「週休日が少ないことによって被った割増分の損害」を請求できると判断された。なお、この金銭賠償によって損害は回復されると認められ、慰謝料は認められなかった。

【SPCの見解】

■パートタイム労働法第8条の「差別的取扱い禁止」が主な争点となった珍しい事案である。厳密にいえば、同条項を根拠とした「同一待遇を受ける労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求」はできず、この差別が「不法行為」にあたるということで、これによる損害賠償が認められているのだが、どちらにしろ、会社側は今後より一層(同条項の改正が決定したことにより益々)、パートタイム労働者に対する差別的取扱いに注意しなければならなくなるだろう。また、〈2〉の要件に該当させないために、就業規則に正社員のみ「配転義務条項」を設ける等の形式的な対応をしていたとしても、本件のように実態で判断される場合もあるため、実態の把握・改善が求められる。

労働新聞 2014/4/21/2965号より

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