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子の海外挙式で年休、コロナ拡大し拒否される

   

京王プラザホテル札幌事件【札幌高判 令和6年9月13日】

 

【事案の概要】

ホテルの運営等を行うY会社に勤務していた宿泊部部長(X)は、令和2年3月にアメリカで行われる娘の結婚式に参加するため、年次有給休暇の時季を指定した。Y社は、渡航予定の前日に新型コロナウイルス感染拡大を理由に、時季変更権の行使を行った。

Xは、Y社の行った時季変更権は「事業の正常な運営を妨げる場合(労基法39条5項)」に該当せず、違法な時季変更権を行い、挙式に参加できないなど精神的苦痛を被ったとして、Y社に対して労働契約上の債務不履行または不法行為により慰謝料等を請求した事案の控訴審。

なお、一審ではXの請求は棄却され、控訴した。

【判決のポイント】

年次有給休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは使用者の干渉を許さない労働者の自由であるとされている(最二小判昭48.3.2)。

事業の正常な運営を妨げるか否かは、利用目的の評価を交えることなく、客観的に判断されるべきである。

 

一方、本件ではXの年次有給休暇の利用目的自体が問題視された訳でなく、当時の世界的パンデミックの最中に海外へ渡航し、新型コロナウイルスに感染してしまう可能性があり、帰国後に社内で感染拡大を引き起こしてしまい、事業の運営を妨げる可能性もあった。

 

時季変更権の行使については、労働者に被る不利益を最小限度に留めるため、事業の運営が妨げられるか否かなお判断は速やかにされる必要がある。

Y社の行った時季変更権の行使についてみてみると、渡航予定前日である3月17日に時季変更権を行使しており、遅きに失し、不法行為を構成する違法性があったと言える。慰謝料として30万円と弁護士費用3万円容認する。

【SPCの見解】

一審と二審では異なる判断がされていて、会社側の労務担当者としては実際には難しい判断となりました。

年次有給休暇の取得については、使用者の時季変更権は権利としてあるものの、年次有給休暇自体が「使用者の関知を許さない労働者の自由である。」とされており、やはりハードルが高いものと感じます。

勿論、権利としては実際に時季変更権を行使すべき状況も発生してくるので、本件のように時季変更権の行使が遅きに失すると指摘されないように可能な限り早めの対応を心がけることも重要になります。

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