白血病で半年休業、異動拒否して現職復帰希望
トーカイ事件【東京地判 令和7年2月18日】
【事案の概要】
従業員(X)は、Y社との間で雇用契約(ローカル職)を締結し、B大学病院で清掃業務に従事していた。
Xは令和3年7月頃に白血病のため入院し、半年間の休業を要した。令和4年1月に同年3月より、復帰を希望した。
Y社は産業医の意見も聞き、「復職は可とします。ただし、職場環境の調整と異動が必要と判断します。」との説明を受けた。職場環境の調整と異動が必要な理由は、感染症に罹患する可能性があるためとされた。
また、Y社の課長らは、Xの主治医とも面談し、「就労に関して医学的な問題はなく、再発や感染症のリスクもない。」と説明を受け、XとY社間でよく話し合って決めてくださいと伝えられた。
その後、Y社は主治医と産業医の意見が異なるものの、“より安全な方を選択する”という理由から、4月1日よりシルバー事業本部東部第一営業部東京営業課へ異動させ、介護用品の商品管理業務に従事するように命じた。
Xは、本件配転命令は権利の乱用で無効であると主張した。
【判決のポイント】
(1)就業規則の配転命令に関して
Xはローカル職であり、就業規則で通勤圏内(通勤時間が2時間以内)の異動があると定められていた。
今回の配転後の勤務先も通勤2時間以内であり、就業規則に基づき、配置転換を命じることができる。
配転命令権については、業務上の必要性がある場合はできるとされており、高度の必要性に限定することなく、労働力の適正配置、事業の合理的運営、業務運営の円滑化などがある限りは、業務上の必要性が肯定される。
(2)業務上の必要性に関して
使用者は労働者に対して、雇用契約上の安全配慮義務を負っており、労働者の健康状態を考慮して配置転換をすることは事業の合理的運営に寄与するものであり、業務上の必要性を肯定すべき事情であると言える。
以上より、Xが本件配転命令に反対していたことを考慮しても、Y社が行った配転命令には業務上の必要性が存するものと認められる。
【SPCの見解】
産業医は会社の業務等も把握しており、より業務と病状を照らし合わせた意見を受けることができる一方、主治医はそれまでの患者の療養過程を把握しているため、一般的な医学的観点から意見を受けることができます。
今回の判例では、産業医と主治医の意見が異なり、会社としては配転命令を下すかどうかの難しい判断となりました。
しかし、Y社/課長が主治医との面談も行い、就業規則とも照らし合わせて最終的には“より安全な方を選択する”との理由から、配転命令を下しました。主治医との面談や手配の時間はかかりますが、慎重に対応し、とても参考となります。
判決自体も、東亜ペイント事件(最二小判 昭和61年7月14日)の枠組みを用いて判断されています。
使用者は安全配慮義務を負っており、労働者の健康状態を考慮して配置転換をすることは事業の合理的運営に寄与するものであり、業務上の必要性を肯定すべき事情であると言えるともされ、この点はおさえておきたいポイントになります。


















