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■有給休暇って意外と奥が深いのです(金澤)

      2016/02/21

労働基準監督官のドラマ「ダンダリン」が始まりましたね。
仕事柄、気になって観てみました。ちょっと過剰な演出がある気がしますが、労働関係のポイントが各所に散りばめられていて面白いです。
(監督官総出で泥にまみれて匍匐前進は「えぇっ!!」って思いましたが)

「セクハラの相談は労基署ではなく労働局(雇用均等室)の管轄」という点を強めにアピールしていた気がしたのですが、これは労基署からの要望でしょうか・・・
セクハラ問題では労基署は動けないので、困ることが多いのかもしれません。ちなみに出産・育児・介護関係や性別による差別の問題も均等室の管轄です。もうややこしいので、ワンストップサービスを希望します。

さて、本日は有給休暇のお話です。労働基準法では第39条に定められていますが、これがなかなか奥が深いのです。
もしよろしければ、以下のポイントについて「YES」または「NO」でお答え下さい。

<有給休暇に関する問題>
Q1)会社は、必ず労働者の希望通りの日に有休を与えなければならない。
Q2)会社の承認がなくても、申出のみで有休は取得できる。
Q3)会社は、当日の有休申出や、欠勤後の有休振替えの申出は拒否できる。
Q4)定年退職・再雇用者については、有休付与日数に関する勤務年数について、定年前の勤務年数を通算しなくてもよい。
Q5)労働者が有休を取得した際に、「新たに付与した有休」と「前年から繰り越した有休」のどちらを消化したとするかは会社が自由に定めることができる。

いかがでしょうか?有給休暇に関するポイントはもっと沢山ありますが、とりあえず5問といたします。
では、回答です。

<回答>
A1)NO
原則は、労働者の希望する時季に与えなければなりません。しかし、会社には時季変更権の行使(労基法39条5項)や、労使協定による計画年休付与(労基法39条6項)等により、本人の希望以外の有給休暇を与えることもできるのです。よって「必ず」という訳ではありません。

A2)YES
【参考判例】 白石営林署事件(最判昭48.3.2)より
実際に労働者が有給休暇を取得する場合は、「請求」しなければならない訳でなく、単にいつからいつまで取得するかを「指定」するだけで取得でき、使用者の「承認」は不要です。このとき、使用者は時季変更権を行使することができますが、これを行使しないかぎり有給休暇が成立します。
但し会社の承認がないと、有休当日まで時季変更権の行使があるか否かが確定しないため労働者自身も不安です。よって、実際は事前に会社の承認を得ておいた方が安心ですし、職場の仲間の顰蹙を買わなくて済むと思います。

A3)YES
当日の有休取得申出というのは、実態は「事後の有休振替申出」(※)であり、認めるかどうかは会社の自由です。(振替を認めずに欠勤としても法的には問題ないということです)但し、慣例として通常認めているという実態があると、気まぐれに「今回は認めない」ということは許されない場合もあります。
(※)有休1日とは、午前0時から午後12時までの24時間であるため、当日の朝に有休取得の申出を行ったとしても、既に1日は始まっているためです。

A4)NO
有休の付与日数は、勤続年数によって定められており、勤続年数が長い者ほど多くの有休が付与されます。よって、定年退職者にとって、再雇用後に定年前の勤続年数が通算されるか否かはとても重要なポイントです。解釈例規では以下の通り定められています。
「定年退職者の嘱託としての再雇用は、単なる企業内における身分の切替えであって実質的には労働関係が継続していると認められるから、勤続年数を通算しなければならない。」(S63・3・14基発第150号)
「解雇と再採用との間に相当期間が存し、労働関係が断絶していると認められる場合はこの限りでない。退職金が支払われたか否かは勤続年数の計算に関する限り直接関係ない」(S23・5・22基収第1100号)

A5)YES
労働基準法には定めがないため、各社が取得順位を定めて運用することが可能です。(民法上の問題として捉えても、どちらの説もあり、ハッキリしていません)特に就業規則にも定めがない場合については、繰り越し分の方から消化すると解釈した方がトラブルを防止できます。

いかがでしたでしょうか?有給休暇には、他にも短時間労働者の比例付与などもありますし、意外と複雑です。労働基準法39条違反は「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」ですので、甘く見てはいけません。有給休暇のことでお困りでしたら、お気軽にご相談ください。

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