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■起訴休職について考えてみました

      2016/02/21

就業規則に「刑事事件で起訴された時は休職を命じることがある」と規定されておる就業規則を目にすることが少なくありませんが、皆さまの就業規則はいかが規定されておりますでしょうか?

いわゆる「起訴休職」を規定しても有罪判決が確定するまでは無罪となる可能性(無罪の推定)もあり、「起訴休職」規定を理由に、従業員へ発せられる休職命令が有効とされるには、裁判例では
(1)起訴された従業員が就労することにより、会社の対外的な信用失墜の恐れがある場合または職場秩序の維持に障害が生ずる恐れがある場合
(2)当該従業員の労務の継続的な提供や企業活動の円滑な遂行に障害が生ずるおそれがある場合
とされております。

つまり、刑事上起訴されたという事実のみでは、労務の提供が不可能となるわけではないから、「起訴休職」が有効とされるものではないし、休職させていたとすれば、これらの要件を欠くに至った場合には直ちに復職させる必要があり、それにもかかわらず「起訴休職」に付した場合には、使用者の責めに帰すべき事由による履行不能として従業員は賃金請求権を失わない、となります。

そして、「起訴休職」は“起訴の結果を待って、有罪であれば懲戒処分の対象とすることを想定している、起訴後有罪判決の確定まで懲戒処分を猶予する意味を持ち、使用者は判決確定前に懲戒処分をすることはできないと解される”とされております。

実務では、刑事事件になりうる不祥事で、本人も事実関係を認めている場合には、会社の信用維持のため、刑事処分を待たずに懲戒処分をしなければならない場合もあるので、その点も考慮した規定をする必要があると考えます。

しかしながら、「起訴休職」として明確に規定されていない場合であって、このような不祥事が起こった場合には「その他会社が必要と判断する場合」と規定されておれば、その規定をもとに休職命令を発することは不可能ではないと考えられる為、「起訴休職」を明確に規定している、これからの規定を検討されていらっしゃる場合には、この点を考慮し規定、運用いただけたら幸いです。

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