労務相談、管理者研修、未払い残業代請求対策なら労務管理センター

事業場外みなし労働時間制の適用

      2016/02/23

阪急トラベルサポート事件 【東京高判 2012/03/07】
原告:海外添乗員  /  被告:会社


【請求内容】
派遣添乗員が「事業場外みなし労働時間制」の適用は不当として未払い残業代等の支払いを求めた訴訟の控訴審。

【争  点】
原告の業務は「事業場外みなし労働時間制」の適用要件である「労働時間を算定し難いとき」に該当するか?

【判  決】
本件添乗業務には会社の具体的な指揮監督が及んでおり、「労働時間を算定し難いとき」には当たらない。

【概  要】
海外ツアーの添乗員である原告は「労働時間を算定し難いとき」にあたるとして「事業場外みなし労働時間制」が適用されていたが、これを不当として提訴した。会社は、添乗員に携帯電話を貸与し、ツアー中は常に電源を入れることや、実際に遂行した業務内容について添乗日報を作成するよう指示していた。また、ツアーはあらかじめ作成された日程表に沿って行われ、ホテル、レストラン、バス等の予定時間が記載された指示書が配布されていた。

【確  認】
【事業場外みなし労働時間制】(労働基準法38条の2)
労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは(実際に働いた時間にかかわらず)所定労働時間労働したものとみなす制度のこと。
労働時間の大半を会社の外で過ごし、そのまま直帰することの多い営業職などによく適用されている。

(※業務遂行のために所定労働時間を超えて労働することが通常必要となる場合は、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。ただし、労使協定の締結と、協定の行政官庁への届出が必要)

 

【判決のポイント】

<労働時間を算定し難いときとは?>(行政解釈)
⇒使用者の指揮監督が及ばず労働時間を算定することが困難な場合をいう。事業場外の労働でも、労働時間の算定が可能な(=事業場外みなし労働時間制が認められない)場合として、以下の基準が定められている。
①何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
②無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合
③事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的な指示を受けたのち、事業場外で指示通りに業務に従事し、その後事業場に戻る場合
※本件は上記①~③のいずれにも当てはまらない(=本来は事業場外みなし労働時間制が認められるはずのケース)

①本件添乗業務には、労働時間管理者が同行していなかった。
②携帯電話の所持は義務付けられていたが、随時、使用者の指示を受けながら労働していた訳ではない。
③具体的な日程記載の指示書が交付されるものの、具体的な状況(当日の天候や道路の渋滞状況等)に応じて
変更可能性があり、ツアー終了後も事業場に戻らない。

しかし、1審では認められた「事業場外みなし労働時間制」が、今回一転して認められなかった理由は以下の通り。

■添乗員が提出する添乗日報は実際の旅行日程を正確かつ詳細に記載することが義務付けられており、この内容については多くの現認者(店員・ホテルのフロント係など)がいるため、信用性が高く、この添乗日報と会社配布の指示書を対照することで相当程度労働時間の判断が可能(=事業場外みなし労働時間制が認められない)

【SPCの見解】

■会社の外での業務が主で、会社に戻らずそのまま直帰する営業職などの勤務形態の社員には、よくこの「事業場外みなし労働時間制」が適用されてきたが、近年、携帯電話等の電子機器の導入により事業場外勤務の社員との連絡も容易になったため「本当に使用者側が労働者の労働時間を把握できないのか?」という点が問題になるケースが増加している。「携帯電話を貸与していること=事業場外みなし労働時間制が認められない」という訳ではないが、今回のように従来の行政解釈に当てはまらないケースでも事業場外みなし労働時間制が認められなかった点は参考とすべきである。事業場外みなし労働時間制はあくまで例外的取扱いであることを再認識すべきであろう。

労働新聞 2012/8/6/2883号より

 - , , ,

CELL四位一体マトリック
労働判例