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インタアクト事件

   

裁判年月日 令和元927  法廷名 東京地方裁判所   結果:退職金請求を認容 

 

請求の内容 

引継ぎを行わなかったなど20の懲戒解雇事由を理由に、退職金を不支給とした被告に対し、平成28年度冬期賞与48万円余、退職金69万円余等を請求した。 

 

争点 

賞与および退職金支給義務があるか否か 

 

判決 

冬期賞与支給日は、必ずしも12月9日以前とされていたわけではなく、その他に、被告が原告を支給日在籍社員として取り扱わないことが権利濫用に該当することを裏付ける証拠はない。原告は、平成28年度冬期賞与を請求できる権利を有しない。 

 

退職金が賃金の後払い的性格を有しており、労基法上の賃金に該当すると解されることからすれば、退職金を不支給とすることができるのは、労働者の勤続の功を抹消ないし減殺してしまうほどの著しい背信行為があった場合に限られると解すべきであるが、被告における勤労の功を抹消してしまうほどの著しい背信行為があったとは評価できない 

【判決のポイント】

賞与 

原告が被告を退職したのが平成2812月9日であると認められるのに対し、平成28年度冬期賞与支給日が同月13日と設定され原告は、「支給日に在籍している社員」には該当しない。 

 

退職金 

被告が本件背信行為として主張するものの多くは、そもそも懲戒解雇事由に該当しないものである上、仮に懲戒解雇事由に該当しうるものが存在するとしてもその内容は原告が担当していた業務遂行に関する問題であって被告の組織維持に直接影響するものであるとか刑事処罰の対象になるといった性質のものではない。 

【SPCの見解】

確認 

賞与支給日在籍要件について 

賞与の支給に関して、賞与を労働の対価としてとらえたうえで、支給対象時に在籍しない従業員に対しても支払い義務があるとする判例(日本ルセル事件 S49.8.27 東京高裁)がありますが、多くの場合、賞与の支給要件として支給日に在籍していることと就業規則に定めてあれば、その規定を有効としています。(大和銀行事件 S57.10.7 最高裁他) 

しかし、ニプロ医工事件(S59.8.28 東京高裁)では、会社の給与規程では6月支給と定めかつ過去にも629日ないし30日に支払っていたものの、ある年については会社と労働組合の交渉の結果、支給日が913日となり、その結果913日より前に退職した者に賞与が支払われなかったことについて、「給与規程で支給月が定められ、かつ労使間で了承されていた6月中の日をもって支給日とし、その支給日より前に退職する場合に限り合理性を有する」と判断し、913日より前に退職した者についての賞与支払い義務を認めました。 

 

退職金と懲戒解雇 

1)懲戒解雇の場合、退職金不支給措置も認められるが、その場合でも、労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為があることが必要となる 

 

2)懲戒解雇の場合であっても、不信行為の程度に照らして、退職金の一定割合について、支払いが認められるときがある。 

 

3)退職金等を不利益に変更する場合、その不利益を緩和するための代償措置や経過措置をとることが望ましく、変更が「合理的」な内容かどうかの判断において、代償措置は、直接的なものだけでなく、間接的に不利益を緩和するものまでも含まれることがある。 

 

 

見解 

賞与について、支給日が変更となった場合についても在籍要件を適用する旨の規定が就業規則にあるかどうか、並びに慣行がどの程度認められるかが問題になりえます。賞与を含む賃金について正しく定めておかないと、不要なトラブルに発展する可能性があり、注意が必要です。 

退職手当については、対面による引継行為を敬遠したこと(退職代行を利用したこと)には一定の理由があると解され、原告において対面による引継行為に代えて原告代理人を通じた書面による引継行為を行っていることなどの本件における全事情を総合考慮すると、原告について、被告における勤労の功を抹消してしまうほどの著しい背信行為があったとは評価できないと判示されていることから、退職金不支給は勤続の功労を抹消するほどの著しく信義に反する行為があったときに限定されると考えられます。 

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