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偽装請負是正のため有期で直接雇用したのち雇止めは違法か?

      2016/02/23

ダイキン工業事件 【大阪地判 2012/11/01】
原告:労働者Ⅹら  /  被告:会社Y

【請求内容】
偽装請負是正のため有期で直接雇用され、その後期間満了により雇止めされたことは無効として提訴した。

【争  点】
請負として就労させていた者達を直接雇用に転換する際に、期間の定めを設けたことは違法か?

【判  決】
是正指導の内容は「偽装請負の是正」であり、対象者らを有期雇用とすることを禁じる法的効果はないため有効。

【概  要】
Y社は、請負会社に雇用されるⅩらを請負契約にて就労させていたが、Y社社員から指揮命令を受けているという偽装請負の状態であったことから、労働局から是正指導を受けた。Y社は違法状態是正のため、請負契約として就労させていたⅩらを請負から有期の直接雇用に切り替え、その際、契約期間(更新)の上限は2年6ヶ月であると書面等を配布して説明した。その後2年6ヶ月が経過したため雇止めとしたが、Ⅹらはこれを無効として提訴した。

【確  認】
【黙示の労働契約の成否が争われた判例】(サガテレビ事件 福岡高判昭58.6.7)
「労働契約といえども、黙示の意思の合致によっても成立しうるものであるから、事業場下請労働者(派遣労働者)の如く、外形上親企業(派遣先企業)の正規の従業員と殆ど差異のない形で労務を提供し、従って、派遣先企業との間の事実上の使用従属関係が存在し、しかも、派遣元企業がそもそも企業としての独自性を有しないとか、企業としての独立性を欠いていて派遣先企業の労務担当の代行機関と同一視しうるものである等その存在が形式的名目的なものに過ぎず、かつ、派遣先企業が派遣労働者の賃金額その他の労働条件を決定していると認めるべき事情のあるときには、派遣労働者と派遣先企業との間に黙示の労働契約が締結されたものと認めるべき余地がある。」

 

【判決のポイント】

1)請負から直接雇用に転換したときに有期雇用(最長2年6ヶ月まで)としたことは無効か?
【原告Ⅹらの主張】契約上は請負であったが、自分達は「実態としてY社の従業員であった(事実上黙示の無期労働契約が成立していた)」から、それを直接雇用契約に切り替える段階で一方的に有期雇用に変えるのは許されない。
【判決】本件労働契約における期間の定めは有効であり、原告らの主張には理由がない。
①ⅩらとY社の間に「事実上の使用従属関係」があるとは認められないこと。(理由は以下の通り)
■Ⅹらの労働条件等は請負会社が独自に決定しており、請負会社は独立した企業としての実態があった。
■Ⅹらも、自身の労働契約の相手がY社ではなく請負会社の方であると認識していた。
②本件是正指導に、直接雇用する際に期間の定めをすることを禁止し、または無効にする法的効果はないこと。

2)直接雇用してから2年6ヶ月経過したことにより雇止めとしたことは違法か?
【判決】Ⅹらが「2年6ヶ月を超えて更新されること」に対する合理的期待を有する余地はなかった。
①Y社は、直接雇用化の前後を通じて、書面等の配布により一貫して更新の限度が2年6ヶ月であることを説明しており、また、就業規則にもその旨の規定を設けていたこと。(その代わり正社員登用試験を実施していた)
②生産量の増減に合わせた人員数の調整の必要性や、景気の先行きが不透明な当時の経済情勢があったこと。

3)Y社にⅩらの精神的苦痛に対する損害賠償義務はあるか?
本件雇止めに至る一連の過程において、Y社に違法な行為は認められず、Ⅹらに損害賠償すべき責任はない。

【SPCの見解】

有期労働契約は本来「臨時的・一時的な業務」を行わせるための雇用形態であり、そもそも常用的な労働者を雇い入れることを前提としていないので、期間満了により雇止めをすることは、本来は問題ない行為のはずである。しかし現実には、多くの企業が恒常的業務に有期労働者を配置して契約を反復更新し、使用者の都合により雇止めをするという法の趣旨に反した運用を続けていることから保護の必要性が生じたものである。本件は、有期労働契約の本来の趣旨に沿った契約であり、当初から「上限は2年6ヶ月である」と再三説明をしていることからも、労働者に更新への期待を抱かせておきながら使用者の都合で突然雇止めをしたケースとは異なり、Y社に違法性はないといえる。

労働新聞 2013/10/14/2940号より

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