年収3000万円で雇用、業務廃止して整理解雇は
三菱UFJ事件【東京地判 令和6年9月20日】
【事案の概要】
職務内容をアナリストとして、Y銀行に雇用されていたXは、業務の集約・廃止に伴い、整理解雇された。
Xは、Y銀行との間で特別嘱託とし雇用契約を締結し、職務内容は、「ジャパンストラテジスト(日本を中心とする経済、金融情報を内外顧客向け発信担当アナリスト)とされていた。
令和2年以降の年収は、賞与を含み3000万円を超えていた。
Y銀行を含む、金融グループ(MUFG)では、Y銀行をおよびA社との間で円金利リサーチ機能に重複していたため、Y銀行の本件業務はA社に集約されることとなり、令和5年8月付けで当該業務は廃止された。
Y銀行は、当該業務の廃止に伴い、A社に雇用の引継ぎを打診したが、拒絶された。
また、同年5月より合計3回の面談を行い、別の提案として①為替セールス業務のポスト(年収2000万円)を提案するとともに、②退職する場合は、再就職支援金として約4600万円を支給する旨の提案を行った。
しかし、Xはこの①と②の提案を拒絶したため、③賃金等の処遇を下げて、別のリサーチ業務に従事することを提案したが、Xより無理である旨の回答があった。
Y銀行において、これ以上の提案は行わず、令和5年6月26日付けで解雇した。
【判決のポイント】
(1)雇用契約に関して
職務内容が一定の付随業務が含まれており、円金利リサーチのみに特化したものとは言えないものの、ジャパンストラテジスト業務に限定する旨の合意が存在したと認められる。
(2)整理解雇の有効性、人員削減の必要性
Y銀行の円金利リサーチ業務の集約は、経営判断として合理性がある。集約に伴って、人員削減の必要性が認められ、MUFJが多額の利益を得ていることをもって人員削減の必要性がない又は低いとはいえない。
(3)解雇回避努力に関して
Y銀行はA会社への雇用の引継ぎの打診や為替セールス業務のポスト(他の総合職より高い年間2000万円の賃金)、再就職支援金として約4600万円の退職金の支給などの提案を行った。
それに加え、その他の提案として、同じ職務内容がないにもかかわらず同程度の賃金の支払いや新たな職務の創設などが解雇回避努力として必要であるとまではいえない。
整理解雇としての必要性や人員選定の合理性、手続きの相当性は社会通念上相当なものとして是認でき、解雇回避努力も相当程度行ったと認められ、本件解雇は合理的な理由があり、社会通念上相当である。
【SPCの見解】
今回の判例は、業務の集約に伴い、労働者の当該業務が廃止され、整理解雇の有効性が争われました。
本件では、いくつかの提案(①~③)を行い、解雇を回避するY銀行側の主張が認められました。
職種限定の合意は、配置転換がないという点では労働者有利なものとなります。反対に、今回のように解雇をする場合は“職種限定があるため”を理由に、解雇回避としての配置転換の検討・打診が不要であるとするのは、高度職種の場合認められないかと思います。
別部門への打診、説得とあわせて退職金の上乗せの提案を行い、合意が得られなければ、最終的には解雇の判断となります。
企業側も優位な人材確保のため、職種限定や配置転換なしとった条件での募集も増加していることや令和6年4月より雇用契約書については「従事すべき業務と場所」に変更の範囲の記載も追加されましたので、実務上参考となる判例になります。