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管理監督者とは?(認められたケース)

      2016/02/23

セントラルスポーツ事件 【京都地判 2012/04/17】
原告:元従業員X  /  被告:Y社

【請求内容】
Xが自分は管理監督者ではなかったとして、残業手当・深夜手当・減額した賞与の差額等の支払いを請求した。

【争  点】
エリアディレクターであったXは管理監督者にあたるか?

【判  決】
Xは管理監督者にあたるため、残業手当は不要だが深夜手当は必要。賞与減額は就業規則等の根拠がなく不当。

【概  要】
Xはスポーツクラブを運営するY社にて、4~8つのクラブがあるエリアの長である「エリアディレクター」として勤務していたが、ある日不正行為を理由に副店長に降格され、その半年後に退社した。
Xは在職中、管理監督者とされていたが、人事権などの決定権がないことを理由に管理監督者ではないと主張し、残業手当、深夜手当および付加金、降格による賞与減額による差額などの総計約1,898万円の支払いを要求した。

【確  認】
【管理監督者】労働条件の決定その他労務管理につき経営者と一体的な立場にあるものをいう。
<判断基準(要件)> ※「課長」「部長」などの名称にとらわれず、実態に即して判断すべきである。
① 職務内容が少なくとも、ある部門全体の統括的な立場にあること
② 部下に対する労務管理等の決定権等につき、一定の裁量権を有しており、人事考課、機密事項に接していること
③ 管理職手当など特別手当が支給され、待遇において時間外手当が支給されないことを十分に補っていること
④ 自己の出退勤について自ら決定し得る権限があること
※HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド事件(過去の記事No.59(2012.08.08)管理監督者と年俸制の割増賃金)の基準を踏襲。

 

【判決のポイント】

<なぜ管理監督者には、残業手当は不要で、深夜手当は必要なのか?>
労働基準法第41条では、管理監督者について、第四章(32条~41条) 第六章(56条~64条) 第六章の二(64条の2~68条)で定める「労働時間、休憩及び休日に関する規定」の適用を除外すると規定されてるためである。この適用除外に「深夜割増」や「年次有給休暇」は含まれていないため、通常の労働者と同様に支払う必要がある。
※よって、管理監督者が深夜労働(午後10時から午前5時まで)をした場合は、時間単価の0.25倍を支払わなければならない。なお、残業割増は不要であるため、1.25部分の支払いは不要である点に注意が必要である。


<なぜXは管理監督者とされたのか?> ※上記「確認」の基準に当てはめて検討する。
① エリアを統括するうえでの人事権、人事考課、労務管理、予算管理など必要な権限を実際に有していた。
② 担当エリアにおける予算案の作成権限を有し、人事上の機密事項にも接しており、一定の裁量を有していた。
③ 非管理職の最上位職である副店長の基本給が月額約28万円であるのに対し、エリアディレクターは約53万円で業務給の上乗せもあり、管理監督者として十分な待遇を受けていた。
④ 人事部に勤務状況表を提出する際に(チーフの確認以外)誰からも管理されておらず、遅刻・早退・欠勤によって賃金が控除されたことがなく、出退勤の時間を拘束されておらず、自己の裁量で自由に勤務していた。


賞与を「功労報酬的なもの」(業績を考慮して支給することがある)とみるか「賃金の後払い的なもの」(基本給の○ヶ月分を支給)とみるかにより異なり、後者であれば一方的な減額はできない

【SPCの見解】

■裁判でも認められにくい「管理監督者性」が認められた珍しいケースである。「名ばかり管理職」として残業代を請求されることがないように、上記「確認」の4要件を基準に自社の管理職の定義が適正か今一度確認して欲しい。管理職に「役職手当」などを支払っており、いざ裁判となった際に「これは実はみなし残業代でした」と主張しても、賃金規定にその旨の規定がなければ、ほぼ認められないので注意が必要である。
また、管理監督者だからといって労働時間の管理を怠っているケースもあるが、管理監督者であっても深夜割増の支払いが必要であることから、計算のため所定労働時間の定めは必要であり、健康管理の観点から実際の労働時間を把握しておくことは重要である。
労働新聞 2013/6/10/2924号より

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