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固定割増賃金制度の導入を有効とするためには?

      2016/02/23

ワークフロンティア事件 【東京地判 2012/09/04】
原告:労働者Xら9人  /  被告:Y社

【請求内容】
Ⅹらは固定割増賃金制度の無効を主張し、Y社に対し、未払割増賃金および付加金の支払い等を請求した。

【争  点】
Y社の導入した固定割増賃金制度は無効か?

【判  決】
固定割増賃金は労働者の同意を得ており有効だが超過分を精算しておらず、差額に加えて同額の付加金支払い命令。

【概  要】
Y社は割増賃金を支払っていなかったことについて労基署から是正勧告を受けたため、固定割増賃金制度を導入した。Y社は「基本給には時間外労働45時間分の固定割増賃金○○円を含む」と記載した労働条件通知書を交付し、Xらはそれに同意する旨の署名捺印をした。しかしXらは「新賃金規定への改定は割増賃金に関する就業規則の不利益変更であり無効」と主張した。また、残業が45時間未満の場合に基本給の一部をカットしたことも違法と主張した。

【確  認】
【固定割増賃金制度とは】使用者が労基法37条に定める計算方法による割増賃金を支払う代わりに、固定の金額を残業代として支払う制度。(みなし残業代などと呼ぶ場合もある)この制度導入には以下の要件を満たす必要がある。
1)定額残業代を残業代として支払う旨の規定が、明確に就業規則および雇用契約書に定められていること
2)定額残業代部分と通常の賃金に当たる部分が就業規則や雇用契約書において明確に分けられていること
3)定額残業代を超える時間外労働が発生した際には、その超えた時間にかかる残業代を別途支払うこと
※よって、労働者ごとに「○○手当○万円を▲時間分の残業手当として支払う」と雇用契約書に明記するとともに、毎月「▲時間分」を超える残業をしたか否かを調査しなければならない。(当然、超えた分の残業代支払は必要)

 

【判決のポイント】

1)固定割増賃金制度の導入について合意が成立していたか?
Y社は労働者Xらに固定割増賃金制度について明記した労働条件通知書を交付しており、Xらはそれに同意する旨の署名捺印をしたことから、通知書に記載されている内容での合意が黙示的に成立しているといえる。
2)固定割増賃金制度の導入は就業規則の不利益変更として無効か?
固定割増賃金に関する個別合意が成立していると認められる以上、規程改定は不利益変更にはあたらない。
3)実際の残業時間が45時間(固定割増賃金分)に満たなかった場合に、固定割増賃金を減額しても良いか?
一般には、実際の残業時間が固定額に満たない場合であっても、満額が支払われると解するのが相当である。
(極端に言えば、その月の残業が全くなくても、固定割増賃金は全額支払うということ)  本件のY社が固定割増賃金制度を導入した経緯や、現に1年ほど、45時間を下回る場合でも全額が支給されていたことから、Y社の制度も一般的な考え方と同様であると認められるから、45時間に満たない部分の減額は不当。

【番外編】固定割増賃金の減額ではなく、超過分を翌月以降に「繰り越す」ことは違法か?
(例)毎月3万円の固定割増賃金を支払っている会社が、2万円分の残業しかしなかった労働者に対して、差額の1万円を次月の割増賃金に充当してもよいか?(次月に4万円分の残業をしても固定額3万円+繰越分1万円の支払いでよいか?)
⇒ 繰り越しは可能とする判決が出ているが、(SFコーポレーション事件(東京地裁平21.3.27))裁判の主な争点として議論された上での判断ではないことや、まだ地裁レベルであることから、現時点では様子を見るのが妥当ではないかと思われる。

【SPCの見解】

■固定割増賃金制度を適法に運用していくことはなかなか難しい。何故なら、労働者ごとに割増賃金の単価は異なるため、例えば一律3万円を固定割増賃金として労働者全員に支払っても、それが「何時間分の割増賃金にあたるのか」はそれぞれ異なるからである。よって「この人は○時間分の割増賃金にあたるから、今月の実残業▲時間と比較すると、超過している●時間分の割増賃金が別途必要になるな」という計算を全労働者について行わなければならず、その事務手間は膨大である。但し、固定割増賃金部分は割増賃金の単価の計算の基礎から除外できるため、割増賃金の単価を下げるという効果もあり導入メリットも大きいといえる。(但し不利益変更になるため個別同意は必須)

労働新聞 2013/6/17/2925号より

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