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出産育児一時金の増額改正

      2023/04/10

出産育児一時金とは、健康保険法等に基づく保険給付として、出産に係る経済的負担を軽減することを目的に一定の金額が健康保険の事業を実際に運営する機関(以下、保険者という)より支給される制度です。この度、従来の給付額42万円から令和5年4月以降の出産に対しては給付額が50万円へと増額改訂されることが決定しました。

 

給付対象者は被保険者又は被扶養者である家族で、妊娠85日(4ヶ月)以後で出産したことが条件となります。さらに早産や死産(流産)、人工妊娠中絶も対象となります。

 

医療機関が採用している制度により請求方法が異なりますので、以下順に確認していきます。

 

・直接支払制度

全国健康保険協会、健康保険組合等加入している保険者が出産育児一時金を医療機関等に直接支払う為、費用の一時立替が必要ありません。

  • 出産費用が出産育児一時金を上回る場合

→不足分を窓口で支払い、その後の保険者への手続きは不要です。

  • 出産費用が出産育児一時金を下回る場合

→保険者へ差額分の支給申請をします。

・受取代理制度

直接支払制度への対応が困難とみられる小規模の分娩施設等の医療機関等が被保険者に代わって一時金を受け取ります。この場合、2か月以内に出産予定の医療機関等に証明を貰い、出産前に加入する保険者への事前申請が必要となります。費用の一時立替が不要である点は、直接支払制度と同様です。

・償還払い制度

直接支払制度、受取代理制度を導入する施設でも退院時に窓口で出産費用を自費で全額支払った後に加入する保険者へ申請し、支給を受けます。支払った際の領収書が必要となる点にご留意ください。

 

今回の増額改訂には出産費用が年々増加し、地域によっては持ち出しが発生していることも背景にあります。「厚生労働省 出産費用の実態把握に関する調査研究(令和3年)の結果等について」によると、出産費用は年間平均1%前後で増加していますが、公的病院の都道府県別の出産費用(全国平均)は、以下のとおりです。

 

公的病院の出産費用(全国平均)平均値:452,288円

公的病院の出産費用(全国平均)中央値:449,915円

 

この数値からも見てとれるように中央値でも従来の給付額を上回っています。

 

給付額が50万円に引き上げられたことにより、かかる医療機関によっては出産費用が出産育児一時金を下回るケースが増えるかもしれません。直接支払制度を利用し、支給決定通知書を受け取る前に、早期に差額分の受取りを希望される場合は「内払金支払依頼書」を申請しましょう。

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