労務相談、管理者研修、未払い残業代請求対策なら労務管理センター

事業場間で異動があった場合の36協定における上限規制の取扱いについて

   

労働基準法の改正により時間外・休日労働の上限規制がより厳格になってから2年以上が経過しました。

 

会社は、この法改正が適用される36協定に基づき、その協定した時間外労働の時間数を超えることがないように、従業員の労働時間を適切に管理する必要があります。この36協定を遵守することに苦慮されてみえる企業も多い印象です。

 

36協定は、事業場ごと(本社と工場など)に協定することとされていますが、年度や月の途中に、事業場間で転勤が生じた場合、転勤した従業員が従事可能な時間外労働は、転勤前の事業場で発生した時間外労働と転勤後の事業場において発生する時間外労働とは通算されるのでしょうか。それとも、転勤によって、転勤前の時間外労働はリセットされるのでしょうか。顧問先企業様から実際にご相談いただいた事案です。

 

この疑問ついて36協定における時間外労働の取り扱いに関連する通達(基発1228第15号平成30年12月28日)をご紹介します。

 

【問】

同一企業内のA事業場からB事業場へ転勤した労働者について、①法第36条第4項に規定する限度時間、②同条第5項に規定する1年についての延長時間の上限、③同条第6項第2号及び第3号の時間数の上限は、両事業場における当該労働者の時間外労働時間数を通算して適用するのか。

 

【答】

①法第36条第4項に規定する限度時間及び②同条第5項に規定する1年についての延長時間の上限は、事業場における時間外・休日労働協定の内容を規制するものであり、特定の労働者が転勤した場合は通算されない。これに対して、③同条第6項第2号及び第3号の時間数の上限は、労働者個人の実労働時間を規制するものであり、特定の労働者が転勤した場合は法第38 条第1項の規定により通算して適用される。

 

と記載があります。

 

①の「法第36条第4項に規定する限度時間」は、1ヵ月の時間外労働について原則として45時間以内とし、1年間の時間外労働は360時間以内とする上限規制を示しています。

②の「同条第5項に規定する1年についての延長時間の上限」は、1年間の時間外労働は720時間以内とする上限規制を示しています。

③の「同条第6項第2号及び第3号の時間数の上限」は、1ヵ月100時間未満、2~6ヵ月平均80時間以内とする上限規制を示しています。

通達によると①および②においては、事業場ごとにおける協定の内容を規制するもののため、通算しない(リセットされる)③については個人の実労働を規制するものであるため通算する(リセットしない)という取扱いとなります。

 

法律を遵守できているか否かを判断する場合の考え方として重要な点となりそうです。

 

また、これに伴い、特別条項の適用を年に6回までとする回数の制限について、労働基準監督署に、見解をうかがったところ、通算すると回答した監督署と通算しないと回答した監督署がありました。時間をおいて調べていただき、①②の趣旨に沿って、同様に通算しない(リセットされる)と回答いただいた監督署に信憑性がありましたが、それでも健康管理に配慮することから、やはり年6回までとすることが好ましいというご助言をいただきました。

 

事業場ごとにさせて良い時間外上限という考え方よりも個人の健康に配慮して、どれだけ時間外労働や休日労働をさせるかという視点を持っていただくことが健全な職場環境であると言えそうです。

 -