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国・品川労基署事件

   

平成24年4月、労働者Xは、防音の装置等の設計および施行を営むY社と雇用契約を締結し、主に営業を担当していた。平成25年10月以降、連続して休暇を取得するようになり、平成26年7月末付で休職期間満了となり、自然退職となった。

Xが、サービス残業や独占禁止法に違反する行為の強要、パワハラを受けたとして、抑うつ状態・適応障害になったとして、労働基準監督署に労災保険の休業補償を請求したが、不支給処分受けた。同様に東京労災保険審査官においても不支給処分を受けた。このことを不服として、本件取り消し処分を求めて提起した。

 

 

【判決のポイント】

1、時間外労働の有無

疾病の発症前おおむね6月間のXの時間外労働は、19時間から25時間程度にとどまり、心理的負荷の強度は「弱」とされる。

2、違法行為の強要

Xは、他社が独占禁止法に違反するカルテルを行っており、違法行為を強要されたと主張するが、そのような存在は認められない。

3、パワハラの有無

平成25年3月に上司より、「ふざけんな、おまえ。」や「あほ。」などと厳しい口調で指導されたことは認められる。しかし、Xが単純な計算をミスしたり、上司の話を聞かずに回答したりしたため、厳しい口調ではあるが、Xが自身で計算できるようになるための指導と認められる。また、入社時の間もない時に、頭をはたくなどの行為があるが、平成25年9月頃の疾病発症まで、相当程度の期間があいている。心理的負荷の強度は「中」である。

 

したがって、本件疾病は、業務上の疾病には当たらず。不支給決定は適法である。

【SPCの見解】

裁判では、起きた事案を包括的にみるのではなく、1つ1つ個別に確認を行っている。

具体的には、①時間外労働の有無 ②違法行為の有無 ③パワハラの有無の3つである。

結果として、①は「弱」 ②は違法行為の存在を認めれない ③は「中」と結論付け、Xの請求を退けている。

 

精神障害の業務起因性の認定要件に関しては、「業務以外の心理的負荷および個体側要因により発症したとは認められないこと」が1つの要件としてあるが、私生活の問題(例えば、離婚、借金など)が原因となって発症したと考えられる事案も過去にありました。

会社としては、なかなか確認ができない部分やデリケートな部分ではありますが、一緒に管轄の監督署に相談に行き、客観的なアドバイスを頂くことも有効かもしれません。

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