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人生脚本

   

「人生脚本とは人生早期に親の影響で発達し、現在も進行中のプログラムをいい、個人の人生の最も重要な場面で、どう行動するかを指図するものです(エリック・バーンの定義)」

幼児は、養育者(実親とは限らない)からの存在認知を得られるように試行錯誤しながら、養育者の期待に沿うように適応していきます。ここで身につけた思考・感情・行動のパターンがその後の生き方に大きく影響します。こうあれば養育者からのストローク(愛情)を得られ、生き抜けると確信し、自分の思考・感情を変えようとした決心を「幼児決断」といいます。

幼児は、養育者、主として母親と父親から最初に「許可・禁止令」(非言語によるメッセージ)を受けます。

「許可」とは、「生まれてきてよかった」「養育者は私を大事に思ってくれる」というポジティブで解放的な脚本のメッセージです。

「禁止令」とは、ネガティブで拘束的は脚本のメッセージで、「自分らしい生き方を阻害」します。

次に「生きていく知恵」を言葉によるメッセージとして受け取ります。しつけや世間の常識です。

そして、子どもは、3~4歳頃になると養育者をモデルに ” 今、ここ ” での行動を脚本としてファイルします。

では、具体的に「禁止令」から見ていきます。

「禁止令」には12の主なリストがあります。

1.存在するな→乳幼児にとって不慣れで不安定な抱き方をされたり、忙しいので授乳やオムツ交換を待たされたり、養育者の入院などで最も欲しい時にストローク(愛情)が貰えないときに、「産まれてこない方がよかったんだ」「存在しない方がいいのだ」と解釈して、あえて生きにくい道を選んだり、「よし、自分の存在を認めてもらうために必死に何でもやろう」という幼児決断をすることがあります。大人になっても、無意識のうちに「どうしたら、自分の存在価値を周囲に認めてもらえるか」と考えて、あえてリスクが高いことに挑戦することもあります。

2.男(女)であるな(お前であるな)→養育者が兄よりも妹を、女の子よりも男の子を可愛がっていると受け取ったとき、自分にストロークを向けてほしい一心で身につけることがあります。男の子は女の子のように優しく、女の子は男子のようにりりしく生きようと幼児決断をすることがあります。

3.子どもであるな→早く一人前に成長することを期待されると、「頼りにされるなら、早く期待に応えよう」といった幼児決断をすることがあります。さらに「もう、大きいのだからちゃんとしなさい」とか、弟や妹の面倒を見ることを期待されたりすると、「早く大人になろう」と幼児決断をすることがあります。大人になっても、実力以上に背伸びをして、自由な発想や行動をすることに抵抗を感じたりします。

4.成長するな→いつまでも養育者が溺愛していると「成長するな」という幼児決断をする可能性があります。大人になっても、他人に依存しがちで、自立への自信を持ちにくくなります。

5.成功するな→「そんなやり方ではダメ!」と養育者が手を出してしまうと、子どもは「どうせ最後はやってくれるならやることはない、適当にやればいい」と幼児決断をすることがあります。大人になっても、誰が見ても後少しで成果が出るという段になって、急に熱意をなくして投げ出してしまうなど、欲しい結果を手に入れられないという傾向があります。

6.何々するな→「遠くに行ってはいけません」「遅くまで遊んではいけません」「車道に出てはいけません」というような、養育者の不安や心配から発せられたメッセージが、自由にやりたい子どもの気持ちをセーブしてしまい、「何もしない方がいい」という幼児決断をすることがあります。大人になっても、自分の考えて判断するのを迷って「私だけで決めてはいけない」「誰かに決めてもらいたい」と思ってしまいます。

7.重要であるな→養育者に甘えて近づくと「子どもはあっちに行っていなさい」「邪魔だから来ないでちょうだい」などと邪険に扱われたりすると、「私は重要ではない」という幼児決断をすることがあります。大人になっても、リーダーの役割が与えられるとストレスを感じ、避ける傾向があります。半面、縁の下の力持ち的存在であることを良しとしながらも、不満を感じています。

8.所属するな→一人で遊んでいると機嫌がよく、他の子どもたちと一緒になって遊んだりすると不機嫌そうな養育者を感じると、「一人で遊んだ方が、気楽で安全だ」と幼児決断をすることがあります。大人になっても、親しくなりかけると仲間から身を引いてしまう傾向があります。

9.愛するな・信用するな(近づくな)→子どもにかまってくれない。離婚、別居、入院などで養育者と別れる体験をすると、「愛するな」という幼児決断をすることがあります。大人になっても、人を信用できない、愛することができないなど、愛と信頼の気持ちを素直に表すことができにくくなります。

10.健康であるな→病気になると一生懸命に世話をやいてくれるが、回復するとかまってもらえない。あるいは、「体を鍛えなさい」と言いながら「今日は寒いから」と外へ出してくれない。このようなことから「健康でない方がいい」と幼児決断をすることがあります。大人になっても、病気や心配をかけることで、周囲からストローク(愛情)を得ようとします。

11.考えるな→せっかく自分でやり方を考えたのに、「私の言った通りになぜしないの」といったそぶりを見せたり、養育者が間違ったことをしたときに注意したら、「お前は生意気な子ね」と言って叱られたりすると、子どもは、「考えることをやめよう」「言う通りにさえしていればいいんだ」と幼児決断をすることがあります。大人になっても、自分で判断しなくてはならないとき、後先を考えずに行動して混乱し、どうしていいのかわからなくなってします傾向があります。

12.感じるな→「男の子は涙をみせてはいけません」「女の子は、しとやかにしなさい」など、感情を抑えさせるメッセージを出すと、「感じてはいけない」「悲しんではいけない」と幼児決断をすることがあります。大人になっても、自然な感情を表すことが苦手になったり、自分自身の痛みも感じにくくなったりします。

「生きていく知恵」の中で、繰り返し駆り立てられるように言われ、否定的なメッセージとなって、自らを駆り立ててしまうメッセージを「ドライバー」といいます。

ドライバーには次の5つがあります。

1.完全であれ→子どもの頃、養育者から繰り返し「きちんと最後までやりなさい」と言われ続けると、大人になっても「完全にやらなければならない」という意識が働き、自分は勿論、他人に対しても完全であることを要求したりします。

2.他人を喜ばせろ→子どもの頃、養育者から繰り返し「部屋を散らかさないで」「みんなに迷惑かけないように」などと言われ続けると、大人になっても「いつも他人に親切にして、喜んでもらわなければならない」という意識が働き、他人には優しく心から喜んで貰えるように努めようとします。

3.一生懸命にやれ(努力せよ)→子どもの頃、養育者から繰り返し「コツコツと努力しなさい」「がんばれ」と言われ続けると、大人になっても「何事も努力が肝心だ」と思ってしまい、一生懸命努力することが結果につながるのだ、と結果よりもプロセスを重視したりします。

4.強くあれ→子どもの頃、養育者から繰り返し「泣いてはいけない」「少しぐらい痛くても我慢しなさい」などと言われ続けると、大人になっても喜怒哀楽を表に出さず厳しく自分をいましめるようになります。

5.急げ→子どもの頃、養育者から繰り返し「急ぎなさい」「テキパキしなさい」などと言われ続けると、大人になってもいつもセカセカしています。話を聞いているときでも時間を気にして時計を見るので、「早くは話を終わらせろ」という意味に誤解されがちです。

最後にエリック・バーンが示した「勝利者の脚本」「敗北者の脚本」「非勝利者の脚本」をご紹介します。

1.「勝利者の脚本」→例え何かに失敗があっても選択肢を現実吟味し、自律性の獲得と自己実現を目指して人生を生きる人といえます。

2.「敗北者の脚本」→後悔や不安あるいは根拠のない期待から「もし・・・だったら」と考え、消極的な人生を過ごす人といえます。

3.「非勝利者の脚本」→「自分はこんなもの」と思い込み、勝利者と敗北者の中間的立場の人生を過ごす人といえます。

敗北者・非勝利者の脚本を持った人でも、無意識での幼児決断が「禁止令」「ドライバー」から何なのかを認識し、意識して新たな決断をすることで、自分の脚本を勝利者への脚本に書き換えることができるとエリック・バーンは言っています。

ちなみに、私の幼児決断は、「ドライバー」の ” 他人を喜ばせろ ”と ” 急げ ” です。もろ両親からの影響です。これらを意識して変えるようにしています。

あなたの「禁止令」「ドライバー」は何でしょうか? 意識してみてください。

 

 

 

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