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最低賃金の引き上げと生産性向上について

      2021/07/23

今月14日に中央最低賃金審議会が決めた、「2021年度の地域別最低賃金の引き上げ幅28円を目安とする」のニュースは大きな話題となっています。

最低賃金は毎年審議がされ、その年の10月から適用されます。日常会話の中でも最低賃金額について出てくるほど、広く関心のある話題です。

昨年は新型コロナウィルス感染症の影響で、異例の「目安を示さない」という結論に終わり、ここ愛知県では926円から1円引き上げの“927円”が昨年決定した最低賃金額でした。都道府県の審議会はこれからですが、このまま愛知県が28円の引き上げを決定した場合、10月労働分からは“955円”が適用されます。

労働者にとっては嬉しい話題かもしれませんが、事業主にとっては、一人の時給単価が28円上がるということは、8時間労働で一日当たり224円(28円×8時間)、ひと月20日労働と考えて4,480円(224円×20日)、年間240日労働と考えて53,760円(4,480円×240日)の給与としての引き上げが必要になります。

この給与額以外に、雇用保険料・労災保険料も多くなり、もちろん社会保険の等級が変動することにより健康保険料・厚生年金保険料も、そして子ども子育て拠出金も多くなります。50人の労働者で考えると、先ほどの53,760円を単純に50倍すればよいだけではないことが分かります。

事業主にとっては、決して簡単に受け入れられる話ではありません。感染者数が多く、緊急事態宣言が発令され、休業を余儀なくされた企業が多い都道府県での決断はどうなるのでしょうか。

もちろん労働者にとっても、雇用保険料、社会保険料の増額は自身の負担分が増えることは同じです。これまでと同じ時間就労することで年間の所得が増え、扶養内で働いている方々にとっては、労働時間を見直す必要性も出てきます。

しかしながら、毎年のように大幅に引き上げられる最低賃金への対策を、企業が行っていることも知っておかなければなりません。働き方改革による長時間労働の見直しや、健康経営の取組みの中でのワークライフバランスやワークエンゲイジメント等、少しずつ新聞やテレビ、雑誌などでも聞くことが多くなってきたワードに付いてくるのが「生産性向上」です。

最近では大学入試の小論文で、「今後人工知能(AI)に取って変わる職業は何か」等の、AIについてのテーマが出題されることも多く、これから社会に出る学生たちにも、生産性向上についての意識が向けられつつあります。

最近はスーパーやコンビニエンスストアでも、店員を介さずに支払いができるセルフレジやセミセルフレジに変わっていることも当たり前になってきました。新型コロナウィルス感染症対策で、現金の受け渡しも問題視されていたので、感染対策プラス現金の受け渡し間違い防止に有効であると同時に、レジには人が必要だという概念が覆りつつある出来事とも言えます。

新型コロナウィルス感染症で一気にデジタル化が進んだことにより、大手は特に新しい機械の導入が早く、同時に人手不足の解消もクリアされているように思われます。労働者にとっては、目先は嬉しい最低賃金の引き上げも、自身のレベルアップを図り、AIにはできない知識を習得することで、仕事を奪われない努力をする時代の到来も意外と近いのかもしれません。

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