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健康保険法等の改正について

      2021/07/19

「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」が6月11日に公布され、健康保険法・国民健康保険法・生活保護法等、いくつかの法律の改正事項がありました。今回はそのなかでも重要な4つの法改正についてご紹介したいと思います。

 

1・傷病手当金の支給期間の通算化            施行日:令和4年1月1日

傷病手当金とは、業務災害以外の病気やけがで労務に服することができなくなり賃金が受けられない場合に支給される健康保険の給付金です。(3日間連続の休業後、4日目以降の休業より支給)現行の制度では、傷病手当金の支給期間は支給開始から1年6か月を超えない期間が支給期間となっており、途中で出勤して不支給となった期間も1年6か月の計算に含まれてしまい、1年6か月経過後の支給は受けられないことになっています。改正後は、支給期間が「支給を始めた日から通算して1年6か月間」に変更になります。つまり、途中で出勤した期間は1年6か月の期間から除かれることになり、傷病手当金の給付を1年6か月分受給することが可能となります。

 

2・任意継続被保険者制度の資格の喪失事由の追加     施行日:令和4年1月1日

任意継続被保険者制度は、健康保険の被保険者が退職し健康保険の資格を喪失した後も、最長で2年間、引き続き従前の健康保険に加入することができる制度です。この任意継続被保険者の喪失事由について現行では、

  1. 任意継続被保険者となった日から起算して2年を経過したとき
  2. 保険料を納付期日までに納付しなかったとき
  3. 死亡したとき
  4. 被用者保険・船員保険・後期高齢者医療の被保険者等となったとき

これらに該当した場合に、任意継続被保険者の資格を喪失することになっていますが、改正後は、資格喪失事由として、

「任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を保険者に申し出た場合において、その申し出が受理された日の属する月の末日が到来したとき」という要件が加わり、被保険者からの任意脱退が認められるようになります。

 

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任意継続被保険者の保険料の決定について(健康保険組合のみ)施行日:令和4年1月1日

現行では、任意継続被保険者の保険料は①退職前の標準報酬月額②保険者の全被保険者の平均の標準報酬月額のうち、いずれか低い額に保険料率を乗じた額となっています。

改正後は、健康保険組合が規約に定めた場合は、②より①が高い場合は、高い方の①の退職前の標準報酬月額を保険料の算定基礎とすることが可能になります。

 

 

3・育児休業中の保険料の免除条件の見直し        施行日:令和4年10月1日

現行法では、育児休業中の健康保険・厚生年金保険の保険料免除は、月末の時点で育児休業を取得している場合にその月の保険料が免除されることになっており、短期の育児休業を取得する場合、月末時点で育児休業を取っているか否かで保険料が免除されるか否かが変わってきてしまうという不公平さがありました。改正後は、14日以上休業した月については、月末に育児休業を取得していなくても、保険料が免除されることになります。

 

4・後期高齢者医療における窓口負担割合の見直し     施行日:令和4年10月1日から令和5年3月31日までの間において政令で定める日

後期高齢者医療の被保険者のうち、現役並み所得者以外の被保険者であって、一定所得以上(課税所得が28万円以上かつ単身世帯の場合の年収が200万円以上・複数世帯の場合の年収320万円以上)であるものについて、窓口負担が現行制度の1割から改正後は2割となります。

 

以上、4つの法改正についてご紹介しましたが、冒頭での「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」の趣旨は、社会保障において、現役世代への給付が少なく、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの構造を見直し、全ての世代で広く安心を支えていくという趣旨と言われています。少子高齢者社会は今後も続くと思われ、日本の社会にとって大きな課題です。今後も政府の少子化対策としての取り組みに注目をしていき、関連した法改正の情報提供をお伝えしていきます。

 

 

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