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赤字でも、求人を行っている場合は整理解雇できないのか?

      2016/02/23

東亜外業(本訴)事件 【神戸地判 2012/05/27】
原告:労働者23人  /  被告:会社Y

【請求内容】
配転可能部署があるにもかかわらず、検討せずに行った整理解雇は無効であるとして地位確認・未払い賃金を請求。

【争  点】

求人活動を行っている他部署への配転を検討せずして行われた整理解雇は無効か?

【判  決】
解雇回避努力は可能な限り試みられるべきで、Y社が回避努力を真摯に尽くしたとは言い難く、解雇無効。

【概  要】
Y社は、東藩工場を経営不振により休止するに際し、従業員に希望退職を募ったのち、これに応じなかったⅩら28人を解雇した。Y社は毎年大幅な赤字を生み出しており、既に208人の社外工を削減していた。また、雇用安定助成金制度を活用しての休業実施や、新入社員採用取止め、残業原則禁止、希望退職募集、退職者への再就職のあっせん、他部門への受け入れ打診等を行った。28人中26人は組合員で、Y社は団交拒否の不当労働行為が認定されていた。

【確  認】
【整理解雇の4要件(要素)】
①人員整理の必要性 ②解雇回避努力 ③人選の合理性 ④手続きの妥当性
<本判決での4要件の取扱い>
これら(整理解雇の4要件)は厳密な意味での要件ではなく、評価根拠事実と評価障害事実として、当該整理解雇が解雇権濫用となるかどうかを総合的に判断する上での要素と考えるのが相当というべきである。
(つまり4つ全て満たしていなくても、他の要素に係る事情も加味して総合的に判断して決めることとする)
そして、不当解雇ではないというためには、上記①と③の要素については使用者側に立証責任があり、④およびその他の「解雇が信義則に反する」という事情は、労働者側に主張立証させるのが相当である。

 

【判決のポイント】

1)整理解雇を行う必要性があった(上記要件①)という根拠について
①Y社は毎年大幅な赤字を生み出していたこと。 ②既に208人の社外工を削減していたこと。

2)整理解雇前にY社が行った解雇回避努力(上記要件②)について
①社外工208人を削減した。 ②雇用安定助成金制度を活用して休業を実施した。
③平成23年度の新入社員採用を取止めた。 ④納期の切迫した仕事がある場合以外の残業を禁止した。
⑤1次募集及び2次募集に分けて本件希望退職を実施した。
⑥希望退職者に対して再就職のあっせんを行った。
⑦社内他部門に対して受入れ打診を行った(但し要員充足のため受入れは困難という反応であった)。

3)上記の解雇回避努力を行っても、解雇無効と判断された理由は?
<解雇回避努力の不足>
①Y社は、他の事業所で求人活動を行っていたにもかかわらず、Ⅹらにそれらの勤務場所を提示しなかった。
②Y社がⅩらを他部署に配転することを検討したことを裏付ける的確な証拠が見当たらなかった。
<人選の合理性への疑問>
③Y社があらかじめ客観的基準(年齢、勤務年数、役職、担当職務、資格、特別な貢献度、扶養親族の有無等)を策定し、Ⅹらを含む従業員にこれを提示して十分な協議が行われた事実は認められない。
④整理解雇対象者28人中26人が組合員であり、Y社に団交拒否の不当労働行為が認定されていること。

【SPCの見解】

■本件被告のY社は比較的多くの解雇回避努力をしており、退職者への再就職あっせんまで行っていたが、「求人募集している部署があるにもかかわらず、整理解雇対象者をそこに配転することを検討しなかったこと」や、整理解雇の対象となった者の大部分が組合員であり、Y社が既に団交拒否という不当労働行為を行っていたことから、「組合員を解雇したい」という意思をもってなされた人選ではないかという疑いを抱かれてしまった点が大きくマイナスとなり、総合的判断で解雇無効となってしまったと思われる。昨今の判例では4要件については全てを満たさなくてもよいというものが増えているが、要件が緩和された訳ではなく、未だ厳格な基準で判断されていることに注意が必要。

労働新聞 2013/11/11/2944号より

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