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災害時の時間外労働の取り扱いについて

   

近年、頻発している地震。残念ながら未然に発生を防ぐことはできないといわれています。

災害などの緊急時には事業の安定的な継続に向け、労働時間の大幅な延長が必要となる場合が起こりえます。しかしながら、労働基準法では、労働時間の原則として1日8時間以内、1週40時間以内を定めています。また、休日についても週1日以上与えなければならないことを事業主に課しています。36協定においては1日に延長することができる時間数の上限を定めており、原則としてはその時間を超えて労働させることはできないこととなっています。もし地震などの天災によって事業所が被害を蒙ってしまい、その復旧に伴う大幅な時間外労働が見込まれる場合にはどのように取り扱えばよいのか確認していきたいと思います。

 

緊急時の時間外労働については、労働基準法第33条において「災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁の許可を受けて、その必要の限度において第三十二条から前条まで若しくは第四十条の労働時間を延長し、又は第三十五条の休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない」と規定されています。つまり、災害その他避けることのできない事由がある場合には、例外的に36協定の協定時間を超えて、あるいは36協定の締結がなくとも時間外労働を行わせることができるという取扱いが認められています。

 

実際の手続きとしては、所轄労働基準監督署長に「非常災害等の理由による労働時間延長・休日労働許可申請書・届(厚生労働省ホームページよりダウンロード)」を提出し、事前に許可を受ける、もしくは事後すみやかに承認を受けることになります。通常、災害等は予見しがたく時間外労働を緊急に行うわけですから、事後に承認を受ける形が多いと予想されます。

 

ここにいう「災害その他避けることのできない事由」とは、労働基準法第33条第1項は災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けることの出来ない場合の規定であるから厳格に運用すべきものです。単なる業務の繁忙などでは認められず、自然災害等予見がしがたいものに限られています。さらには、緊急で行うその時間外労働は必要限度の範囲内とされているわけですから、この規定が適用されることは極めて例外的な場合であるといえます。

 

なお、労働基準法第33条第1項による場合であっても、時間外労働・休日労働や深夜労働についての割増賃金の支払は必要です。

ただし、労働基準法第33条第1項に基づく時間外・休日労働はあくまで必要な限度の範囲内に限り認められるものですので、過重労働による健康障害を防止するため、実際の時間外労働時間を月45時間以内にするなどしていただくことが重要です。また、やむを得ず長時間にわたる時間外・休日労働を行わせた労働者に対しては、医師による面接指導等を実施し、適切な事後措置を講じることが重要です。(過重労働による健康障害を防ぐために)

 

突如として発生する地震に備え、どのような防災対策が必要であるのかを認識するとともに、日頃から危機対策も総点検しておくとよいのではないでしょうか。

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