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SPCセミナーに参加して感じたこと

   

通勤途中にキンモクセイの香りが漂い、秋の訪れを感じさせられます。臭覚で感じる季節というのも、風情があっていいものです。

さて、今月の初めに当社のSPCセミナーを開催し、入社2年を迎えた私も初めて会場へ行ってきました。今回は、「無期転換・雇止め 同一労働同一賃金~2018年問題~」のテーマで、代表である國井が講師を務めました。國井のセミナーに参加するのも、今回が初めてだったので、とても楽しみにしていました。

私がセミナーの中で印象に残った「無期転換」の中から少し紹介します。セミナーではまず、正規社員と非正規社員の違いについて、皆さんからご意見をいただくことから始まりました。

その後、配布した資料を見ながらここ25年くらいの推移ついて説明がありましたが、非正規雇用労働者が年々増えていて、数字で見るとなお現状に驚かされました。もっと驚いたのは、「本当は正規社員として働きたいけど仕事がないから仕方なく非正規社員である」人の割合です。

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【不本意非正規の状況】

○ 正社員として働く機会がなく、非正規雇用で働いている者(不本意非正規)の割合は、非正規雇用労働者全体の15.6%(平成28年平均)となっています。   -資料より抜粋-

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私も、当社に転職する前は、子どもが小さいからと言う理由で、8年間は非正規社員として働いていました。教育費もかかるので、何の迷いもなくフルタイム。保育園へ迎えに行く時間帯が同じ働くお母さんは、私と同じようにフルタイムで、中には正規社員として働き、お迎え後にまた仕事に戻るという人も居ました。

働くお母さん仲間では「これから教育費もどんどんかかるし、稼げるものなら稼ぎたい」という声の方が多かったように思うので、15.6%というあまりにも少ない数字には本当に驚きました。

短時間社員のお母さんからはよく「フルタイムで働くなら、正社員になれば」と言われました。でも、私自身が非正規社員にこだわったのは、やはり子どものことです。まだ下の子も1歳でしたし、いつ熱を出すかもわかりません。地元を離れての生活だったため、頼れる親族もなく、古い考え方なのかもしれませんが、夫は仕事を優先すべきと思っていました。

もちろん残業なし。急なお迎え要請があれば、すぐに抜けられるような仕事内容でもありました。私以外にも、同じ仕事ができる人が居たので、その時は負担を掛ける申し訳なさはありますが、子どものことはお互い様という考えは、みなさん同じ。早退する変わりにしっかり子どもを休養させ、早く仕事に復帰する考えは共通していたと思います。

前職では正規社員への道は部署には見込めず、労務管理について勉強したいと思った時期とが重なったので転職を決めましたが、小学生と中学生が居る我が家は、学校行事もバラバラ。その上今年度は、PTAにも選出され、働き方の現実に直面させられたようで、いろいろ考えもしました。

でも、働くお母さんは私だけではないので、PTA活動をする中でも、女性の手際のよさ、効率重視の考え方には、感心するばかりです。部員がお母さんばかりというのは地域性もあるのでしょうが、そういう現状も、非正規雇用で満足している人の多さに影響しているのではないでしょうか。

最近は、イクメン、イクボスという言葉も出るほど、育児や家事に積極的な男性も増え、それゆえに働き方を見直し、残業を減らして家族との時間を大切にしようとの考え方も浸透しつつあります。以前からいわれている晩婚化は、子育て年齢の上昇にもつながります。子育てが落ち着いての女性の社会進出は、40歳越えは避けられないでしょう。

子育てに没頭する間に、世間のIT普及は加速し、ビジネス情報にも疎くなってくると、今さら職場復帰できない(遅れてしまった)と諦めている女性も多いように思われます。20代の若い世代でも、非正規労働を好む人も増えていると知り、それにも驚きました。

ただ、セミナーの中でもありましたが、非正規社員の年収の横ばいは結婚しない(できない)、子どもを産まない(育てられない)に繋がり、少子化問題の解決には程遠いものと言えます。

最近では、女性の再就職への期待の高まりにより、『リカレント教育』が注目されています。女性が出産や育児等によりいったん離職した後でも、学び直す環境や再挑戦する機会を広げようという動きです。もちろん、非正規労働者の国家資格取得なども目的としていろいろな検討がされています。

【厚生労働省パンフレット】

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000177962.pdf

平成30年1月からは、専門実践教育訓練給付金が拡充されるので(対象となる講座は限られますが)、再就職や転職のきっかけに利用されるのもお勧めです。ただし、平成30年1月1日以降の受講開始から適用されるのでご注意下さい。今後の講座増設にもぜひとも注目したい情報です。

正社員になれるわけではない無期転換には、非正規社員だった時の私は魅力を感じませんでしたが、いったいどれほどの人がこの転換権を行使するのかには注目しています。國井もセミナーの中で何度か言っていましたが、それよりも正社員転換についての受け皿を考える方が、企業にとっては大切なことだと思います。

そして何よりも、正社員候補に該当する従業員が、どんなワークライフバランスを考えているのかを確かめることも重要です。帰宅後に、家事・育児・介護に追われていて、正規社員になることで労働時間が増え、睡眠時間が充分に確保できなくなれば、無理が重なり、例えば精神疾患など別の問題も出てくるかもしれません。

私は前職で、パソコン操作にも長けていて仕事が早い週3日勤務の女性に「週5日にすれば、収入も増えるし、会社も助かるよ」と声を掛けたことがあります。彼女の答えは「週5日だと、自分の趣味の時間がなくなるから困る」でした。収入増を誰もが望んでいるわけではないと気付いた出来事でした。

会社が求める働き方と、従業員が望む働き方を合致させなければ、よい方向へとは進まないでしょう。言わないから大丈夫だとか、言わなくても理解してくれるは、夫婦や家族でも難しいものです。ましてや他人である、人事担当者と従業員は、これからよりコミュニケーションが必要になってくると私は思います。

無期転換権行使の時が近づいてきた今、従業員一人一人について検討し、アンケート形式や面談での意思確認をぜひともお勧めします。

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