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駅員が電車内で痴漢、起訴され諭旨解雇の扱いは?

      2016/02/23

東京メトロ事件 【東京地裁 2014/08/12】
原告:駅係員X  /  被告:鉄道会社Y

【請求内容】
電車内の痴漢行為により条例違反で逮捕、諭旨解雇をされたXが地位保全と賃金仮払いを求めた。

【争  点】
諭旨解雇の相当性

【判  決】
非違行為の態様や罰金も20万円と軽微なことを考慮し、賃金仮払いは認めたが地位保全は必要なしとした。

【概  要】
鉄道会社Y勤務のXが、同社が運営する路線内で当時14歳の女性に痴漢行為を行い、迷惑防止条例違反の被疑事実で逮捕。示談の理解が得られず簡易裁判所で罰金20万円の略式命令を受けた。Yは会社の名誉を損ない、社員の対面を汚したとして諭旨解雇処分を行ったが、これに対してXが賃金仮払いと地位保全を求めた。東京地裁は非違行為の態様と罰金も20万円と軽微なことから解雇は酷とし、賃金仮払いは認めたがこれ以上の地位保全の必要なしとした。

【確  認】
日本鋼管事件(最二小判昭49/3/15)より
会社の社会的評価に重大な悪影響を与えるような労働者の行為については、それが職務遂行と直接関係のない私生活上の行為として行われたものであっても、会社の規制を及ぼしうる。従業員の不名誉な行為が会社の体面を著しく汚したというためには、必ずしも具体的な業務阻害の結果や取引上の不利益の発生を必要とするものではないが、当該行為の性質、情状のほか、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等諸般の事情から総合的に判断して、右行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならない。

 

【判決のポイント】

■1.懲戒事由該当正
痴漢行為を防止すべき駅係員という立場にもかかわらず非違行為に及んだものであり、Yの社会的評価の毀損をもたらすものであると評価できるから、本件非違行為は企業秩序の観点から懲戒の対象となり得るとした。
■2.報道の有無と社会的評価の毀損
Xは本件非違行為が報道等により世間に知られることもなく、Yの社会的評価を低下させていないと主張したが、Yの運行する電車内で痴漢行為が行われたこと自体がYの社会的評価の毀損をもたらすといえ、報道の有無に左右されるものではないとした。
■3.示談の有無と処分の関連性について
被害女性側との間の示談に努めたが、被害女性の母親の理解を得られず示談を成立できなかった。従業員が起訴された場合には諭旨解雇とされる一方で不起訴処分となった場合には停職等にとどめられている会社の運用において、起訴・不起訴以外の要素を十分検討した形跡がなく、示談がXの配慮ではいかんともしがたい事情もあって起訴された面を考慮すべきと判断。
■4.諭旨解雇の相当性
同種事案との比較において悪質性が高いとまでは言えない行為であったこと、刑事処分において公判請求はされておらず、迷惑防止条例違反において軽微な罰金20万円の略式命令で処分されるにとどまっていること、会社の前例においては不起訴処分となった場合には停職等にとどめられていること、Xには前科・前歴や懲戒処分歴が一切無く勤務態度に問題がなかったことを併せ考慮し、諭旨解雇より緩やかな処分を選択することも可能であるとの判断。

【SPCの見解】

■従業員に逮捕者が出た場合については起訴・不起訴を処分の判断基準とすることも多い。今回の判決では起訴・不起訴のみで判断するのではなく、起訴となった場合についてもそれに至った経緯を考慮するべきであると示唆している。よって、処分を決定する時期は起訴・不起訴までの経緯を見守り、逮捕者が冤罪を訴え争っているような場合については裁判所の判決を待つのが目安である。また、過去判例において私生活上の行為であっても、会社の社会的評価に重大な悪影響を与えるような労働者の行為については、会社の規制を及ぼしうるという判断がされていることを覚えておきたい。

労働新聞 2015/6/1 / 3019号より

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