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組合バッジ着用に対する懲戒処分は不当労働行為なのか?

      2016/02/23

国・中労委(JR国労バッジ)事件 【東京地判 2012/11/07】
原告:JR東日本  /  被告:国・中労委

【請求内容】
会社は、組合バッジ着用者への懲戒処分を不当労働行為とした「中労委の救済命令」取消しを求めて提訴した。

【争  点】
組合バッジ着用者に対する懲戒処分は、労働組合法の禁止する不当労働行為(支配介入)にあたるか?

【判  決】
当該処分は組合嫌悪の意図で行われたものではなく、処分量定加重にも合理的理由があり支配介入には当たらない。

【概  要】
JR東日本の社員であったAは、20年以上にわたり所属する労働組合のバッジを勤務時間中に着用し続けていたが、これが就業規則に定める「職務専念義務」「服装整正義務(会社が認める以外の胸章等の着用禁止)」「勤務時間中の組合活動禁止」に違反するとして出勤停止処分となった。Aはこの処分を不当労働行為であるとして労働委員会に救済申立てをし、県労委・中労委ともに救済命令を発したため、会社は救済命令の取消しを求めて提訴した。

【確  認】
【労働組合法7条で禁止されている不当労働行為のうち「支配介入」とは?】
労働組合は、使用者から独立した「組合員の自主性に基づくもの」でなければその役割を果たすことが出来ないため、組合の独立性・自主性を損なわせるような使用者の干渉行為は禁止されている。使用者からの支配介入に対しては、労働委員会に救済を申し立てることができ、労働委員会は支配介入行為の差止め等を命令することができる。
<支配介入の例>
①組合活動の妨害 ②組合運営に対する介入 ③組合の切り崩し ④スト参加者に対する(通常の欠勤控除を超えるような)賃金カット ⑤会社施設の利用拒否 ⑥組合の内部問題への発言  など

 

【判決のポイント】

1)組合バッジ着用行為は、そもそも組合活動として保護されるのか?
労働組合はバッジ着用を積極的には支持していない(過去、組合と会社の間でバッジ着用問題については和解している)ため、本件は、組合の指示ではなく労働者Aが自発的に行っているものだが、それが組合の運動方針の遂行行為といえる場合等であれば(組合の統制処分となる場合を除き)組合の民主的運営に役立つものとして保護される。

2)組合バッジ着用行為は、(就業規則に違反しない)「正当な」組合活動であるといえるか?
組合活動が就業規則違反のようにみえる場合でも、実質的に企業秩序を乱すおそれのない特段の事情が認められるときは就業規則違反になるとはいえない。(最三小判昭52.12.13)
バッジ着用は、未着用の他の組合員に対しても組合員であることを顕示して訴えかける心理的効果を有するから、実質的に組合活動としての意味を有し、職務専念義務に違反するものである。また、例え身体的活動としての労務提供に格別の支障は生じないとしても「実質的に企業秩序を乱すおそれのない特段の事情がある」とまではいえない。

3)たとえ組合バッジ着用が不当な組合活動であったとしても、出勤停止処分は過重であり支配介入ではないか?
もし会社の行った処分が一見正当なものであっても、それが「組合嫌悪の意図」で行われた場合は、支配介入に当たる場合があり得る(東京高判平成11.2.24)。本件は、①Aが再三の訓告処分を受けてもなおバッジ着用を継続したことから、処分が重くなったことにも合理性があること。②そもそもバッジ着用行為自体の組合活動としての意味合いが薄れていたこと等から、会社が組合嫌悪の意図でAへの処分を行ったとは認められず、支配介入ではない

【SPCの見解】

■組合活動は憲法で保障されている権利だが、労働者は労働契約上「職務専念義務」を負うため、業務に支障をきたすような組合活動は許されない。しかし、本件のような「組合バッジ着用」が、業務にどれほどの支障をきたすのか個人的には疑問を感じる。実際、同社では「組合バッジ着用」に関する複数の判例があるが、その中には「バッジ着用」と「職務専念義務」は支障なく両立するとして、バッジ着用は就業規則違反ではないとしたものもある。判断が分かれる点であり、安易な一般化は難しいが、少なくとも使用者による懲戒処分が「組合嫌悪」や「組合の弱体化を図る」という動機から行われていた場合は、不当労働行為とされる可能性が高まるため、注意が必要である

労働新聞 2013/9/2/2935号より

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