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従業員への保険料変更の通知について

   

当社の情報コラムでも、何度か投稿している今年の雇用保険料率の2段階引き上げですが、今回は、実務ではどのタイミングで変更するのかという視点でご紹介します。4月1日は、事業主負担分のみの引き上げでしたが、10月1日からは従業員負担分も引き上がったため、給与計算の際に、給与システム等の料率変更を確認する必要があります。

給与の計算期間が「末締め」、支払日が「翌月」の会社では、10月1日から変更になった雇用保険料率の設定変更を、今月支給の給与計算で行います。料率改正からひと月以上経っているので、「ヒヤリハット」を経験した方もいらっしゃるのではないでしょうか。

雇用保険は、労災保険と合わせて「労働保険」とも呼ばれることから、労働に対して掛けられる保険です。そのため、今回のように10月1日が料率改正の場合、10月1日から10月31日までの労働分を、11月支給の給与から改正後の料率で徴収開始します。

しかしながら「10日締め」、「15日締め」など、必ずしも締めが末日である会社ばかりではありません。

労働保険は年度(4月から翌年3月)区切りでの保険料計算を行い、毎年7月10日までに「年度更新」と呼ばれる申告・納付手続きが行われています。

そのため、例えば給与の計算期間が「15日締め」、支払日が「当月25日」の会社では、3月16日から翌年4月15日までの期間を年度更新の区切りとしていることがほとんどです。10月1日の料率改正も、9月16日から10月15日までの給与計算期間で反映するので、10月25日支給から既に改正後の保険料率で徴収開始されているところも多くあります。

一方、健康保険や厚生年金保険の「社会保険」は、月に対して掛けられる保険です。保険料を翌月徴収している会社では、10月の給与計算で、算定基礎届後の『標準報酬決定通知書(定時決定)』に基づいた等級設定が行われました。

もちろん、当月徴収している会社もあるので、定時決定の改定月が9月のため、9月支給の給与計算で反映される会社もあります。

そして、定時決定での等級改正対象の従業員へは任意の形式で「標準報酬月額の改定通知」を出されたと思います。

これは、健康保険法第49条第2項と、厚生年金法第29条第2項の「通知」条文によるものです。それぞれの法律では、違反した場合には「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科されると規定されています。

では、今回の雇用保険料に対する通知はどうなのでしょうか。社会保険の通知をした後なので、「そう言えば、雇用保険料率変更の通知をしなかった」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

雇用保険法には、健康保険法や厚生年金法のような事業主が従業員へ「通知」する条文はなく、通知しなかったことによる罰則もありませんので、ご安心ください。しかしながら、従業員の皆さんが徴収額増を疑問に思われるよりも先に、料率改正について広く周知をしておくことは必要なことです。

マイナンバーカードの普及促進のため、令和6年秋からは、現行の健康保険証の廃止も発表されました。マイナポータルを使って、公金受取口座を登録をすることで、今後の公的年金や給付金受取口座としても利用できるため、給付金請求ごとに口座情報を登録することもなく、新型コロナウィルス感染症での特別定額給付金のような突発的な給付もスムーズに行われることが期待されています。

遠い将来、法律条文も改正され、公的機関や事業主の「通知」の手間も省かれ、自身の情報はすべてマイナポータルで自ら情報収集する時代もやってくるのかもしれませんね。生産年齢人口の減少に伴い、労力が少しでも省けるような対応が進み、あらゆるもののデジタル化も、気付けば変わっていた…となりそうです。

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