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業務命令と不利益変更

   

使用者と従業員との間には労働契約の視点からどんな義務があるかといえば、
使用者には、
1 賃金を支払う(労働契約・賃金規程に基づき約束した給与支払い・最低賃金クリア)
2 安全健康配慮(過重長時間労働禁止・健康診断実施)
3 職場環境配慮(ハラスメントのない職場提供)
従業員には、
1 労務提供(労働契約に基づく約束した労働義務)
2 職務専念(会社は学校でも病院でもなくお金を稼ぐ職場)
3 業務命令遵守※
4 職場秩序遵守(就業規則、社内コンプライアンスを守る)
があります。

今回は、その中の「業務命令」について取り上げます。
最高裁は、業務命令について、「使用者が業務遂行のために従業員に対して行う指示又は命令」と定義しています。
ここにいう「業務遂行のため」とは、労働義務の履行だけでなく職場秩序を維持するためも含むと解されています。
そして、業務命令が有効であり、処分を背景に、従業員に対し命令として強制するには、3つの条件すべてが満たされる必要があります。
1 労働契約に根拠がある
2 労働契約の範囲内にあり、法令および公序良俗に反せず、権利の濫用にもあたらない
3 違反者に対して取り得る措置が権利濫用等にあたらず有効である

次に、不利益変更について取り上げます。
不利益変更には、「合理的判断」が不可欠となります。
それには3つの大きな柱があります。
1 変更の内容
①変更により従業員の被る不利益の程度
②見返り措置(代償措置)
2 変更の必要性
①社内規律等の具体的な変更の必要性
②労働組合や従業員代表への誠意ある対応
③社会通念
3 経過措置による不利益性の緩和措置
特に、緩和措置については、6か月から1年の既得権益の維持が必要になると考えます。

権利と義務のバランスが使用者と従業員に問われるように、業務命令と不利益変更にも正当性のバランスが問われることになります。

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