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■ストレスチェック義務化は、負担が重いかもしれない(金澤)

      2016/02/21

従業員50人以上の事業場に「ストレスチェック」の実施が義務付けられることになりました。(50人未満の事業場は努力義務です)施行日は平成27年12月1日の予定です。具体的な運用は、今後出される省令や指針で示されますが、先月17日に厚労省の安全衛生部から「ストレスチェック制度に関する検討会報告書」が出されましたので、その内容を掻い摘んでご紹介したいと思います。
まだ詳細については未定の部分もありますし、あくまで「検討会報告書」の段階なので、今後変わる可能性もありますが、ほぼこの内容で決まると思われます。

<ストレスチェックの目的>
1)自らのストレス状況について「気づき」を促して、個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させること
2)検査結果を集団的に分析し、職場におけるストレス要因を評価して職場環境の改善につなげること
<注意点>
目的は「本人に、自身の精神状態について認識してもらい、精神疾患の発症を未然に防ぐこと(一次予防)」であり、「会社がうつ病の人をあぶり出すことが目的ではない」という点は、非常に重要です。

<会社に課される主な義務>
1)1年以内に1回以上、ストレスチェックを実施すること
2)ストレスチェックの結果、面接指導の対象に該当する労働者のうち、希望者に対して医師による面接指導を実施すること
3)面接の結果に基づき、必要な措置(時間外労働の削減、業務内容の変更など)を実施すること 等

ではこの先は、一問一答形式でポイントのみお伝え致します。
(厚労省作成のQ&Aとは異なり、独自に編集したものです)

Q:「労働者50人以上」とは、法人単位ですか?事業場単位ですか?また、バイトや派遣労働者はカウントしますか?
A:法人単位ではなく「事業場単位」の人数です。また、産業医の選任義務と同様の基準を想定していますので、バイトや派遣労働者も含みます。

Q:ストレスチェックを実際に実施する(できる)のは誰ですか?
A:医師、保健師、(一定の研修を受けた)看護師または精神保健福祉士です。(実施者といいます)

Q:「医師」とは産業医でなければいけませんか?外部委託してもよいのでしょうか?
A:産業医が実施者となることが望ましいですが、外部委託も可能です。外部委託する場合でも、産業医が共同実施者として関与することが望ましいです。

Q:一般健康診断のときに、ストレスチェックも同時に行ってよいのでしょうか?
A:同時に実施することも可能ですが、ストレスチェックは一般健康診断の一部ではなく、あくまで「別物」なので、一般健康診断の問診票の中に組み入れてはいけません。必ず問診票とは別紙でストレスチェックの調査票をご用意ください。

Q:労働者には「ストレスチェックを受ける義務」があるのでしょうか?
A:労働者には受ける義務はありません。「会社が、労働者に対して実施する義務」(機会を与える義務)があるのみですので、労働者は受検拒否も可能です。但し、「希望者のみ実施」という方法は認められません。

Q:パートもバイトも全ての労働者が対象なのでしょうか?
A:一般健康診断の対象者の取り扱いと同様の考え方です。以下の1及び2のいずれの要件も満たす者が対象となります。
1)無期契約者であること(有期契約者でも、契約期間が1年以上の者、更新により1年以上使用されている者は含みます)
2)1週間の労働時間数が、正社員の4分の3以上であること。

Q:「実施者」や「実施事務従事者」になれない者はいますか?
A:ストレスチェックの受検者に対する人事権を持つ者(解雇・昇進・異動等に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者)は、実施者や実施事務従事者にはなれません。そもそも事業者に個人の結果を同意なしには提供しないのは、ストレスチェックの結果に基づいた人事上の不利益を懸念しての措置であるため、人事権を持つ者が、結果を把握できる実施者等になることは、その趣旨を没却することになってしまい、許されません。

Q:ストレスチェックはどのような方法で行うのですか?
A:調査票による数値評価のみで行うのが基本ですが、それに加えて補足的に、実施者等が面談を行うことも可能です。

Q:調査票のチェック項目はどのような内容にすればよいですか?
A:最低限「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3領域全てを含まなければなりません。今後、国が「標準的な項目」を指針等で示すことを予定しています。

Q:国が示す「標準的な項目」はどのような内容になる予定ですか?
A:既に現場にて広く活用されている、57項目の「職業性ストレス簡易調査票」(旧労働省の委託研究)が、現時点では最も望ましいと考えられています。但し、中小規模の会社には57項目は多いかもしれませんので、さらに簡略化した調査票も検討される予定です。

Q:調査票に会社独自の項目を設けてもいいですか?その場合、注意することはありますか?
A:独自の項目を設けることは可能ですが、その場合は国の示す基準を参考としつつ、科学的な根拠に基づいて決めるようにしてください。また、上記3領域に関する項目は全て含むようにしてください。その他、「性格検査や適性検査」を目的に実施するような項目を含めることは、本来の目的から外れるため不適当です。また、「希死念慮」や「自傷行為」などの項目も、事業者側の対応体制の不十分さを考慮すると、ふさわしくありません。また、結果を数値化せずに「はい」「いいえ」という回答方法とすることも不適当です。

Q:労働者本人への結果の通知は、どのような方法でされますか?
A:他の者が見られないように、封書又はメール等で労働者に個別に直接通知しなければなりません。

Q:どのような結果の場合、面接指導の対象者となるのですか?
A:最もリスクが高いのは、上記の3領域のうち、「心身のストレス反応」の点数が一定以上の者です。「一定以上」の基準となる数字や、「仕事のストレス要因」「周囲のサポート」に関する点数の合計が著しく高い者についても選定する方法を、今後国が示す予定です。

Q:個別の結果についての労働者の同意は、いつ取ればいいのですか?
A:ストレスチェックの結果が本人に通知された(労働者が具体的に結果を承知した)後に、その都度、同意を得ることが必要です。(どんな結果なのかわからない状態では、同意するか否かの判断ができないため)よって、例えば入社時に「今後行われるストレスチェックの結果を、全て会社に提供することに同意します」という契約をしても無効です。こういった、事前の同意はできません。

Q:結果の提供について本人から同意を得たら、上司や同僚等と情報を共有してもよいのでしょうか?
A:本人の同意を得て事業者にストレスチェックの結果が提供された場合であっても、就業上の措置に必要な範囲に限定せず、それをそのまま上司や同僚と共有することは不適当です。

Q:ストレスチェックの結果は誰が保存するのでしょうか?また、保存期間は何年ですか?
A: 個人ごとの結果は、事業者が「実施者に」「5年間」保存させますが、それが困難な場合は、実施事務従事者(実施にあたって実務に携わる者)の中から事業者が指定した者に保存させることもできます。事業者は、労働者の同意がない限り、結果の提供を受けることができないので、保存義務はありませんが、以下のものは事業者に保存義務があります。
1)労働者の同意により、実施者から事業者に提供された個人の結果
2)集団的な分析結果として提供されたもの
3)面接指導の結果

Q:事業者によるストレスチェックの受検強制は禁止ならば、受検を勧奨することもできませんか?
A: 法の趣旨としては、なるべく多くの労働者に受検してもらうことが適当であるため、(強制にならない程度に)受検を勧奨することは可能です。このとき、受検を拒否した労働者に対する不利益取り扱いをしてはいけないことに注意してください。

Q:集団的な分析結果の作成は義務ですか?また、何のために作成するのですか?
A: 集団的な分析結果の作成は努力義務であり、義務ではありません。精神疾患発症の予防については、本人によるセルフケアのみならず、職場環境の改善も重要です。しかし、事業者は本人の同意がない限り結果を取得することができないため、何の情報もないまま改善に取り組むというのは限界があります。よって、全体の結果を分析した集団としての分析結果は、労働者の同意なく取得することができます。但し、労働者が10人未満の事業場では、集団の分析結果を見るだけで個々の結果が特定される恐れがあるため、事業者への提供は不適当とされています。

他にも、さらに詳細が記載されていますので、下記にてご確認ください。

▼ストレスチェック制度に関する検討会報告書
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000068712.html

▼ストレスチェックの概要
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000050909.pdf

<実施までにすべきこと>
1) いつ、誰が、どのように実施するのか決める(産業医なのか?外部に委託するのか?)
2) 各事業場での取り扱いについて、衛生委員会で審議・確認のうえ、内部規程を策定する
3) ストレスチェックの実施について、労働者に周知する

このストレスチェック、会社にとっては色々と大変そうな気がします。これで会社は労働者の精神状態について把握できてしまう(むしろ強制的に把握させられるともいえる)ので、その後例えば労働者が自殺してしまった場合は、「知っていたのに対策を怠った」として裁判では不利になるでしょう。(「東芝うつ病事件」の最高裁判決が出たので、今後は「本人からの申告がなかったから過失相殺」とはいかず、結果責任として同じかもしれませんが・・・)
他にも、費用面が心配です。産業医に依頼するにしても外部委託するにしても、今までの金額のまま、余分な仕事を引き受けてくれるはずもなく、ほぼ確実に今まで以上の経費がかかります。

労務管理の現場も多少混乱するかもしれません。例えば通常のジョブローテーションとして異動を命じた場合でも、労働者から「自分のストレスチェックの結果が悪かったから飛ばされた」などと想像もしないクレームを受ける可能性も否定できません。たとえ「君は結果の提供に同意していないから、会社は結果を把握していない」と伝えても、結果の保管場所が社内であった場合は、「見ようと思えば見られる状況だろ」と言われてしまえば、異動の正当性についての証明は困難です。普通の異動にも気を遣いますね。
モンスター社員にうまく利用され、「自分はストレス過多の状態だから残業を減らせ」「休職させろ」などと主張されることも想定されますし、うっかり結果が流出すれば、個人情報の漏洩として大きな問題になります。

トラブルの種にならないことを祈るばかりです。

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