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有期契約の期間途中解雇は、正社員の解雇より難しいのか?

      2016/02/23

X学園事件事件 【埼玉地判 2014/04/22】
原告:労働者A  /  被告:Y社

【請求内容】
(有期契約途中での解雇無効を前提とした)その後の雇止めは無効として、地位確認、賃金等の支払いを請求した。

【争  点】
本件の有期契約途中でのでの解雇は無効か? もし無効である場合は、その後、期間満了により雇止め出来るか?

【判  決】
期間途中解雇は無効であるが、その後の期間満了雇止めには合理的な理由があり社会通念上相当で有効とした。

【概  要】
X学園のカウンセラーであったAは1年毎の有期雇用契約で約20年間勤務したが、平成24年8月(契約期間の途中)で解雇された。解雇理由は、Aの「業務日報の不提出」「執務場所変更への反抗」「許可なきアンケートの実施」等の行動が、就業規則の「勤務実績が著しく不良と認められるとき」に該当するとされた為である。Aは労働審判にて「会社への期間満了日までの賃金等相当額の支払命令」が確定した後に改めて地位確認請求・賃金支払を求めて提訴した。

【確  認】
【労働契約法第17条】
使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

※上記「やむを得ない事由」については、解雇権濫用法理(正社員等の無期契約の者を解雇する場合の法理)における「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である」と認められる場合よりも狭いと解される。
(平成20年1月23日 厚生労働省労働基準局長による通達より抜粋)

 

【判決のポイント】

■有期雇用契約の期間途中での解雇は、通常の解雇よりも厳しい基準で判断されるのか?
【労働審判でのAの請求内容と結論】
1)期間途中での解雇の無効
2)平成24年3月31日(契約期間満了日)までの地位確認請求(後の裁判で、期間を区切った請求であったと判断)
3)平成24年3月31日(契約期間満了日)までの賃金・賞与の支払い請求
⇒ 会社に解決金144万円の支払命令(解雇後3月までの賃金・賞与相当額) 解雇の有効性については不明確?

【本件裁判でのAの請求内容と判決】
(※労働審判とは請求の範囲が明確に区別されているため、労働審判確定後の提訴だが訴権の濫用にあたらず)
1)期間途中での解雇の無効(改めて主張)
2)(解雇無効により契約が続いたことを前提とした)契約期間満了日による雇止めの無効
3)平成24年4月1日以降の地位確認請求(契約期間満了後の更新を前提として)
4)平成24年4月1日以降の賃金・賞与の支払い請求(契約期間満了後の更新を前提として)
⇒ 解雇は無効だが、雇止めには客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当として有効。
※ Aの勤務態度は、期間満了を待たずに直ちに解雇するほどではないが、期間満了での雇止めは許されるレベルだったという判断である。契約期間途中の解雇は、雇止め(解雇権濫用法理を類推適用したケース)の判断よりも厳しい基準で判断されていることが明確に分かる事例である。(上記「確認欄」の通達内容とも合致している)

【SPCの見解】

■本件で注目すべきは「有期雇用契約の中途解約の難しさ」である。整理解雇の際に「まずは有期契約の労働者を解雇して、それでも経営が厳しい場合は正社員の解雇に踏み切るべき」といった論調もあるので混乱しやすいが、あくまで有期契約の場合は、雇用期間について正社員よりも厳しい(少なくとも約束した日までは雇用するという)特約を結んでいるといえるため、「期間満了による雇止め」ならばともかく「期間途中の解雇」は、正社員を解雇するよりも困難であるということを認識しなければならない。また、本件では労働審判が異議なく確定したにもかかわらず訴訟提起されたが、確定内容に異議がなければ裁判上の和解と同じ効力があるため訴訟移行することは通常ない。

労働新聞 2014/09/15/2985号より

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