労務相談、管理者研修、未払い残業代請求対策なら労務管理センター

未払い残業代の立証責任と推計計算の可否

      2016/02/23

スタジオツインク事件 【東京地判 2011/10/25】
原告:退職者甲・乙  /  被告:Y社


【請求内容】
退職した労働者が在職中の時間外等労働手当(推計計算により約120時間分)および付加金などの支払いを求めた。

【争  点】
時間外労働の立証が十分にできない場合に、月ごとの始業終業時間平均から推計して計算することは許されるか?

【判  決】
会社は証拠書類を不自然に廃棄しており、公平の観点から推計計算算定も認める。(但し深夜・休日労働は否定)

【概  要】
労働者甲と乙は、退職後Y社に対し、在職中9ヶ月間の時間外・休日・深夜労働手当として月平均約120時間分の300万円と遅延損害金(年14.6%)・付加金を請求した。実際の時間外労働等の時間数は、タイムカードがきちんと打刻されていないことから算定が困難であったため、在職中で始業・終業時間が証明されている月のデータを平均するという推計計算にて算出した。
会社は時間外労働の金額などを否認ないし争うとした。

【確  認】
【原則】未払い残業代を請求する場合、どれくらいの時間外労働等があったのかを立証する責任は労働者側にあり、労働日ごとに労働時間を特定して請求する必要がある。

但し、会社側はこれに対して「積極否認・間接反証」(『未払いの残業代など存在しないまたは時間数が異なる』という反論をするならば、客観的な証拠等により証明すること)が期待されている。また、使用者には労働時間を管理する義務があり(厚生労働省「使用者が講ずべき措置の基準」)、これらに関する書類は、労働基準法109条により3年間保存する義務がある。

 

【判決のポイント】

上記のことから「公平の観点」により、労働者側が時間外労働等の時間数を完全には証明できない場合であっても、以下の場合は推計計算により時間外労働を算出することが認められるとした。

①合理的な理由がないにもかかわらず、使用者が、本来容易に提出できるはずの労働時間管理に関する資料を提出しない場合
⇒本件の場合、会社と甲・乙らは別件の裁判でも争っており、月間作業報告書を保存して残しておくのが通常であるのに廃棄したというのは著しく不自然である。
②推計計算に使用した月ごとの始業・就業時刻が、全体の平均値から逸脱していない等、合理的な方法である場合

※但し、認められたのは時間外手当のみで、休日・深夜労働は時間数が個別事情により左右されるため、推計計算するのは合理的ではないとして否定された。

もう一つの争点として甲・乙の管理監督者性も争われたが、甲・乙の月の給与が約38~47万円程度であり、管理監督者にふさわしい待遇とはいえないため、管理監督者ではないとされた。

【SPCの見解】

■今回の争点は「時間外労働等の推計計算」と「管理監督者性」である。
前者については、今回会社側が時間外算出に必要な証拠書類の提出を頑なに拒んだ(廃棄したと主張)ことが、推計計算を認めるという判決に至ったポイントであるといえる。
証明責任は労働者側にあるが、証拠の不備により明確な時間外労働の証明が出来ないからといって、不払い残業が認められない訳ではないという点は大変重要であり、会社の労働時間管理の大切さを再確認させられる事案である。後者については、甲は取締役であったにも拘らず、給与の額が不十分という観点から管理督者性が否定された点は注目である。管理監督者という為には十分な待遇がなされていることが必要である。

労働新聞 2012/7/9/2880号より

 - , ,

CELL四位一体マトリック
労働判例