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■労働者派遣法(改正法案)について

      2016/02/09

平成27年度9月1日施行予定の労働者派遣法案が6月19日に衆議院で可決されました。これまで、2度の廃案に追い込まれ、一部では呪われた法案とまでいわれている、この法案ですが、これまでの派遣法とどのように変わり、どういった影響があるのかをお伝えしたいとお思います。

今回の改正のポイントとして、大きくは4つです。
1. 特定労働者派遣事業の廃止(すべての派遣を許可制に)
2. 労働者派遣の期間(期間制限の見直し)
3. 派遣労働者の均衡待遇の強化
4. 雇用安定措置の義務化・派遣労働者のキャリアアップ推進を法令化

①  現行では、派遣事業には一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業の2種類があり、2つの違いとしては、派遣元との契約形態です。一般労働者派遣事業には登録型派遣や日雇い派遣が含まれ、これらの派遣は、派遣先が決まったところで派遣会社との雇用契約が発生することから、一般労働者派遣事業については事業認可に対してより厳しい規制が適用される許可制となっています。なぜなら、派遣先との契約が終了した時点で派遣元との契約も終了する場合もあるためです。一方、特定労働者派遣事業は、派遣元事業者に「常時雇用される労働者」を対象とする派遣であることから、規制が比較的緩やかで、事業認可は届出制となっています。派遣先との契約が終了しても、派遣元の雇用契約はなくなりません。今回の改正ではこの一般派遣・特定派遣の区別を廃止し、すべての労働者事業を許可制とすることが盛り込まれています。近年この特定労働者派遣事業が拡大し、一般の3倍にまでなっており、2008年のリーマンショック以降、登録派遣等に対する規制強化の気運が高まる中で、要件が厳しい「一般」から、届出だけの「特定」へ流れていると考えられます。こうした現状を改善し派遣元事業者の適正化を進めるために、すべての事業所を許可制にしようとしています。

②  労働者派遣の期間について現行では、政令で定められている26業種については、同一の派遣先への派遣に関する期間制限がなく、それ以外のいわゆる自由化業務については原則1年、最長3年の期間制限が設定さています。自由化業務についても、同一の派遣先への派遣に期間制限が設けられているだけで、別の派遣先で派遣として働き続けることは制限されていません。改正案では、政令26業種を廃止し、無期限に派遣就業できる業務は原則としてないと位置づけます。そのうえで、事業所単位の期間制限、個人単位の期間制限という2つの期間の範囲で派遣を受け入れることになります。事業所単位の期間制限とは、派遣先の同一の事業所における派遣労働者の受け入れは3年を上限とする。それを超えて受け入れるためには過半数労働組合等からの意見聴取が必要です。今までは、同じ仕事への派遣は人が変わっても3年が限度でした。改正後については、派遣先の正社員の過半数の意見聴取をし、3年を超えることができます。つまり、派遣社員をかえることで、その仕事については、3年を超えて派遣社員に行わせることができるようになります。また新たに個人単位の派遣終了は3年が限度になり、同一の職場で同一の仕事を行う場合3年を超えての就業は違法となり、同じ課内の移動も違法となります。派遣元は派遣労働者が就業継続を希望するときは雇用安定措置をとることとなります。1人で同じ職場で働くことができる期間が3年となることで、雇用が不安定になるのではとの批判も上がっている部分です。

③ 現行では、派遣元事業主に対し、派遣労働者の賃金の決定における、配慮義務や教育訓練、福利厚生の実施等のために必要な措置を講ずる配慮義務が課されています。改正後は、これらの配慮義務に加えて、その事由について労働者から希望に応じて説明する義務が課されます。また派遣先事業主に対して、現行の「派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する当該派遣先に雇用される労働者に関する情報」について、派遣元に提供する努力義務が設けられていました、「賃金水準に関する情報」や「当該業務に従事する労働者の募集に関する事項」について提供の義務が課されることとなります。

④ 派遣元事業主の義務として、期間を定めて雇用荒れる派遣労働者につき、①派遣先への直接雇用の依頼②派遣先の確保③派遣元での無期雇用④その他安定した雇用の継続を図るために必要な措置等を講ずる義務が創設されました。これにより雇用の安定を図るのが目的です。また派遣労働者に対する計画的な教育訓練、希望者へのキャリア・コンサルティングを派遣元が実施する義務として創設されています。

この改正により、派遣の形は大きく変わり、今後より一層派遣社員が増えることが予想されます。賛否両論があるこの法案、どう思われますか?

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