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長時間労働是正

   

先日のニュースで、新国立競技場の建設工事において、元請け、下請けを含めて81社で違法残業が発覚したというものがありました。そして、違法残業の中には、80時間を超える会社が18社、100時間を超える会社が10社、150時間を超える会社が3社あったといわれています。残業時間が36協定違反はもちろんのこと、長時間労働による深刻な健康問題の1つは「過労死」です。「過労死は長時間労働等の過重な労働が誘因となって発症した脳・心臓疾患を意味します。」また「長時間労働による精神疾患を患い自ら命を絶つ過労自殺も含まれます。」今回は前者の脳・神経疾患の労災認定についてお伝えいたします。

心筋梗塞などの「心疾患」脳梗塞などの「脳血管疾患」については、その発症のきそとなる血管病変等が、主に加齢、食生活、生活環境などの日常生活による諸要因や遺伝等による要因により徐々に増悪して発症します。仕事が原因のものについては、労災認定を受けることができるため、基準が定められています。

まず、労災と認定されるためには、他の労災と同じように、業務起因性と業務遂行性が必要です。その次に脳・心臓疾患を労災認定するうえで基本的考え方、対象疾病、認定要件を示したものが認定基準です。対象疾病は下記のとおりです。

①脳血管疾患 脳内出血(脳出血) くも膜下出血 脳梗塞 高血圧性脳症

②虚血性心疾患等 心筋梗塞 狭心症 心停止(心臓性突然死含む) 解離性大動脈瘤

認定要件は、業務による明らかな過重負荷をうけたことにより発症した脳・心臓疾患は、業務上の疾病として取り扱われます。ここでいう、業務による明らかな過重負荷、「異常な出来事」「短期間の過重業務」「長期間の過重業務」が起きていないか、また、業務以外による過重負荷ではないこと、発症の基礎となる血管病変等の自然経過でないことを証明する必要があります。

では、「異常な出来事」とは、発症直前から前日間の間において、発生状態を時間的および場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したことです。例えば、業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与したことの精神的負荷・事故の発生に伴って救助活動や事故処理に携わり身体的な負荷・屋外作業中、極めて暑熱な作業環境化で水分補給が著しく阻害される状態や特に温度差のある場所への頻回な出入り等が考えれます。

「短期間の過重業務」とは、発症に近接した時期(発症前おおむね1週間)において、特に過重な業務に就労したことです。発症直前から前日までの間に過度の長時間労働が認められること。発症前おおむね1週間以内に継続した長時間労働が認められること。休日が確保されないことなどの労働時間+不規則な勤務や拘束時間の長い勤務・出張の多い業務・交代制勤務・深夜勤務などの勤務形態や作業環境・精神的緊張を伴うかどうかなどを勘案して判断されます。

「長期間の過重業務」とは、発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したことです。発症前1か月間に100時間又は2~6か月間平均で月80時間を超える時間外労働は業務と発症の関連性が強いと評価され、これに、短期間と同じように他の要件を勘案し判断されます。

長時間労働と過労死の問題は今後も多く取り上げられると思います。この基準を知っていただくと、なぜ昨今長時間労働が話題になっているのか、また、その基準として80時間を超えると脳心臓疾患の可能性が高まるということを知っていただければ幸いです。

 

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