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■会社合併時の労働保険・社会保険の手続きについて

      2016/02/21

会社の合併には、吸収合併または新設合併がありますが、吸収合併とは、合併する会社のうちで、一会社だけが存続し、他の会社は存続会社に吸収されて消滅する合併方式であり、新設合併とは、全ての合併当事会社が消滅会社として清算手続きを経ずして解散し、新会社を設立し、合併当事会社の権利義務等の法律関係を包括的に新設会社に承継させる合併形態を言います。

吸収合併と新設合併では、税金が安いこともありますが、実務上の手続きの上でも新設合併の方が複雑ということもあり、圧倒的に吸収合併にする方が多いようです。合併した場合の手続きは会社法・税法等の手続きの他にも労働保険や社会保険の手続きも必要となります。

今回は、会社が吸収合併をした場合の、労災保険・雇用保険・健康保険・厚生年金保険の手続きについてお話します。

1・労災保険の手続き

存続会社と消滅会社の労災保険上の「事業の種類」が同一の場合と異なる場合で手続きが異なります。

(1)事業の種類が同一の場合

原則として、消滅会社の労働保険を廃止し、存続会社の労働保険を適用することになります。
手続きとしては、消滅会社の労働保険確定保険料申告書を管轄の監督署に提出し確定保険料を納付する(還付の    場合は還付請求書を提出)ことで消滅会社の労働保険の適用事業を廃止します。

存続会社の手続きとしては、合併日以降に見込まれる消滅会社の概算保険料の計上が必要となります。
これを増加概算保険料といいますが、当該年度の賃金総額の見込額が申告済みの賃金総額と比べて2倍を超え増加し、かつその賃金総額による概算保険料の額が申告済み概算保険料よりも13万円以上増加する場合にのみ増加概算保険料の申告・納付が必要となります。

また、消滅会社の事業場において合併後も事業を継続する場合、労働保険の継続事業の一括に関する手続きが必要となります。
合併前、消滅会社にて、継続事業の一括が行われていない事業場については、存続会社は当該事業場を管轄する労基署に労働保険関係成立届を提出しその降り出された番号を基に、継続事業一括認可・追加申請書を労基署へ提出のうえ 継続事業の一括を行います。
合併前、消滅会社にて継続事業の一括がすでに行われていた場合には 存続会社は 継続被一括事業名称・所在地変更届を監督署に提出し、消滅会社の本社・支店等各事業場についての継続事業の一括を行います。

(2)事業の種類が異なる場合

消滅会社の労働保険の適用事業は廃止することなく継続されます。なお、合併による会社名、住所、事業主等の変更に伴い、労働保険名称所在地等変更届の提出が必要となります。

2・雇用保険の手続き

原則として存続会社と消滅会社を同一事業主とみなして被保険者の同一事業主の認定手続きをします。

(1)事業場の手続
合併後も消滅会社の事業を継続する場合、合併による会社名・事業主等の変更に伴う 雇用保険事業主各種変更届を管轄の職安に提出します。
合併後は消滅会社の事業を継続しない場合、消滅会社の管轄の職安に雇用保険適用事業所廃止届を提出し、雇用保険の適用事業所を廃止します。

(2)被保険者の手続
消滅会社の従業員が引き続き存続会社の従業員として雇用保険の被保険者資格を継続するために、存続会社が事業実態承継手続における書類を管轄の職安に提出します。これにより消滅会社の従業員は合併時に被保険者の資格を喪失することなく存続会社で引き続き被保険者資格を取得することができます。資格期間が消滅会社にいた時の期間が存続会社の期間に通算されますから、従業員に不利益を与えることはなくなります。
★事業実態承継手続きに必要な書類とは 新旧事業実態証明書 株主総会議事録 合併契約書 両社の商業法人登記簿謄本 雇用保険被保険者名簿等ですが、管轄の職安により異なる場合がありますので、事前に管轄の職安にお問い合わせ下さい。

3・健康保険・厚生年金保険の手続き

消滅会社の被保険者においては被保険者資格の喪失手続を行います。
同時に管轄の年金事務所または健康保険組合等に対して、健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届を提出し社会保険の適用事業所を廃止します。次に存続会社において 被保険者の資格取得の手続を行います。

以上のように、吸収合併をした場合の手続については、存続する会社と消滅する会社において、合併内容に応じた手続が必要となりますので注意が必要です。

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