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マタハラ・パタハラ等の防止措置の新設

      2016/08/26

地球の反対側で繰り広げられたオリンピックも閉会しましたね。今回も、陸上競技のボルト選手の走りは圧巻でした。次は来週開会するパラリンピック。こちらも楽しみです。

さて、平成29年1月1日に改正育児・介護休業法及び改正男女雇用機会均等法が施行されます。その中で、私が注目したいのは、「育児休業等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置の新設」「妊娠出産等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置の新設」です。

これまでは「不利益取り扱いの禁止」以外は特に規定されていませんでしたが、改正後は「妊娠出産・育児休業・介護休業等を理由とする、上司・同僚などによる就業環境を害する行為を防止するため、雇用管理上必要な措置を事業主に義務づける」が加わります。

私が長女を出産したのは十数年前になりますが、当時の私は産前産後休業どころか就業規則すら関心のない労働者でしたので、持っていた仕事がちょうど片付いた妊娠7ヶ月の時に仕事を辞めました。地元を離れ、夫婦共に実家から遠く離れての結婚でしたし、何より私が子育てに専念したいという思いが強く、辞めることに対しては何の違和感もありませんでした。

病院で診察を受け、妊娠が分かってからはすぐに上司に報告はしましたが、その直後からのつわりは本当に辛かったです。知識がない故に、同僚に迷惑をかけてはいけないという一心で、空腹時に襲われるつわり対策に、こっそりおむすびを食べたりしながら、仕事中はとにかく耐えていました。でも、帰宅後は布団直行です。今思えば、上司に相談して、何かしらの措置を講じてもらうべきでした。

安定期に入ってからは、普段と変わらず仕事をしていたので、上司から「もう無理に制服着なくていいよ」と言われるまでは、自分のお腹がそれほど出ていることも気にしていませんでした。総務に頼んでは大きいサイズの制服を用意してもらっていたのですが、確かにそろそろサイズの限界だなとも思っていましたし、自分だけ私服で仕事をするという遠慮も含め、上司の一言は非常に有難かったです。

でも、上司・同僚の立場で「ハラスメント」を気にしながら該当労働者に接しなければならないとしたら、何をどうすればよいのかなんて分かりませんよね。一概に「否定的な言動を慎め」と言われても、何が否定的と捉えられるのでしょうか。同じ言葉でも、発せられる時のシチュエーションや、声のトーン、ジェスチャーによって、また受け取る人によっても千差万別だと思いませんか。

マタハラ・パタハラに限らず「ハラスメント」については、ざまざまな問題がありますが、必要な措置を講ずるに当たっては、やはり各々の職場風土に即したものを取り決めるべきではないでしょうか。もちろん方針の骨組は会社の意向に沿った最低限のものを作るべきですが、幅広く自社の従業員からの意見を集めて肉付けすることで、他にはない良い方針が出来ると私は思います。

その他の相談窓口を設ける、プライバシーを保護するための措置を講ずる、事後の対応、再発防止などの措置に関しても、匿名での相談にするのか、専用アドレスを用意するのか、意見箱にするのかなど選択肢も多いですし、プライバシー保護と言いつつ該当者が一人しかいなければ特定されてしまうというケースも考えられるので、従業員からの幅広い意見はやはり必要ではないでしょうか。

例えば、検品作業や組立作業など時間内に一定の作業量が求められる職場であれば、仕事中にコミュニケーションを取ることは難しいので、たまにはお昼ご飯を同じ席で食べるなどして、たわいない会話の中からヒントを得るのもいいと思います。

女性に限らず育児休業は男性も取得できる制度ですので、夫婦それぞれにいろいろな考えがあるとは思いますが、せっかくある制度を知らずに過ごすのは絶対に勿体ないので、まずは会社の就業規則から関心を持って読んでみて下さい。そして女性は、妊娠出産の折には、利用できる制度を利用して、継続就業も選択肢に加えて下さい。家庭での家事・育児の分担も忘れずに。

私が結婚と仕事とで悩んでいた時に、当時の社長からもらった「仕事で大切なのは人。人とのコミュニケーション能力さえあれば、技術や知識はいくらでも取り戻せる。」の言葉どおりだと思います。子育てしながら働くならば、その間に子供の面倒を看てくれる人とのコミュニケーションも必要です。

家庭毎の生活環境もあるでしょうから、枠にはまらないケースも出てくることでしょう。従業員が制度を理解した上で、個々の思いと会社の思いを話し合う機会は不可欠です。もちろん「妊婦に仕事は任せられない」などの明らかなハラスメントは論外ですが、相手の立場を考えて発せられる言葉ならば、きっと伝わるはずです。改正と共に、よりよい職場環境が増えるのではないでしょうか。

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