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クリスマス休暇等を一方的に廃止した不利益変更は無効か?

      2016/02/23

フェデラルエクスプレスコーポレーション事件 【東京地判 2012/03/21】
原告:従業員108人  /  被告:会社(Y社)

【請求内容】
クリスマスや誕生日などの所定休日廃止には合理性がなく無効として、休日として行使できる地位の確認を求めた

【争  点】
会社が一方的に、就業規則の変更により所定休日を減らしたことについて合理性が認められるか?

【判  決】
労働契約法10条の合理性の要件満たすものとはいえず、従業員の不利益は小さくないため、休日廃止は無効とする。

【概  要】
国際総合航空貨物輸送を業とするY社のエアポート部門で、所定休日としていたメーデー(5/1),クリスマス(12/25),年末年始(12/30,31,1/2,3)及び誕生日のうち、メーデー、クリスマス、12/30及び誕生日の4日間を休日ではなくして出勤日とする就業規則の変更を行った。

【確  認】
【労働契約法10条】会社が一方的に就業規則を変更して労働条件の不利益変更をすることが認められる場合とは?
<必須>変更後の就業規則を労働者に周知させること
① 就業規則の変更により労働者の受ける不利益の程度 ② 労働条件の変更の必要性
③ 変更後の就業規則の内容の相当性 ④ 労働組合等との交渉の状況
⑤ その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであること
■第四銀行事件(最高裁平成9年2月28日)では、上記の他に「不利益変更に対する代償措置の有無」や「同種事項に関する我が国社会における一般的状況」等も考慮されており、これらも引き続き考慮すべきである。

 

【判決のポイント】

【就業規則の変更に合理性があるか?】
① 就業規則の変更により労働者の受ける不利益の程度
所定休日が4日間減少 ⇒ 計算上、年間所定労働時間が29時間程度増加する ⇒ これは約2%の賃金カットと
同様の効果が生じていることになる ⇒ 労働者の受ける不利益の程度は必ずしも小さいとは言えない。

② 労働条件の変更の必要性  業績の大幅な落ち込みにより経費削減策を行う必要性があったことは認められるが、労働者に上記①のような不利益を受忍させることを正当化するまでの高度な必要性があるとまでは言いがたい。

③ 変更後の就業規則の内容の相当性
所定休日が4日間減っても年間休日は121日程度あり、同業他社と比べて格別少ないということはないが、少なくとも5月1日、12月30日は休日としている航空会社が過半数であり、土日祝日を除いた所定休日を半分以下(7日から3日)とすることは、いささか相当とは言いがたい。また、休日削減に対する代償措置は取られていない。

④ 労働組合等との交渉の状況 労働組合と実質的交渉をし、十分に労使間の利益調整がなされたとは言いがたい。

⇒ 上記から、労働契約法10条の合理性の要件を満たしていないとして、労働者らの請求を認容した。

【SPCの見解】

■労働条件の不利益変更は従業員の同意に基づいて行うことが原則(労働契約法9条)だが、そうするとかなりハードルが高いということで、例外として就業規則による変更(労働契約法10条)が定められている。例外であるため、その条件は厳しい。簡単に言えば「どうしても労働条件を下げる必要があり、労働者の受ける損害とのバランスを考えても致し方ない程度の内容であり、労働組合との交渉や労働者への説明など、しっかりとした手続きを経た上での変更であれば、労働者の個別の同意はなくても、就業規則の変更により統一的に労働条件の低下を適用させることを認める」ということである。休日の削減は案外簡単にやってしまいがちなので、本判例を参考にすると良いだろう。

労働新聞 2012/12/17/2901号より

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