脱退一時金制度
2025/10/14
日本で働く外国人労働者の増加もあり、今回のコラムでは脱退一時金についてのコラムになります。
あまり日本人の方には馴染みのない制度になります。
外国人であったとしても、日本に居住したり、日本の会社で働く場合には、日本人と同様に国民年金や厚生年金保険への加入が必要になります。
しかし、外国人の場合は、将来的には母国に帰国したり、別の国へ行き、日本に居住しないことも多いです。
日本国籍を有しない方が、国民年金、厚生年金保険の被保険者としての資格を喪失して日本を出国した場合、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に脱退一時金を請求することができます。
国民年金法としての脱退一時金と厚生年金保険法の脱退一時金も、どちらも「脱退一時金」という名称ですが、別物として支給額などの計算方法は全く異なります。
- 国民年金の脱退一時金について
(主な支給要件)
・日本国籍を有していない
・厚生年金保険または国民年金の被保険者でない
・保険納付済み期間が6ヶ月以上ある
・老齢年金の受給資格期間(10年)を満たしていない
・日本に住所を有していない など
(支給額)
最後に納付した期間が今年度の場合、支給額は52,530円~525,300円になります。
60ヶ月以上保険料を満額納付した場合が、525,300円になります。納付期間が短かったり、納付の一部免除などしている場合は、支給額は当然少なくなります。
- 厚生年金保険の脱退一時金について
(主な支給要件)
・日本国籍を有していない
・厚生年金保険または国民年金の被保険者でない
・厚生年金の加入期間が6ヶ月以上ある
・老齢年金の受給資格期間(10年)を満たしていない
・日本に住所を有していない など
(支給額)
被保険者であった期間の平均標準報酬額×支給率
支給率とは、最終月(資格喪失した日の属する月の前月)の属する年の前年10月の保険料率(最終月が1月~8月であれば、前々年10月の保険料率)に2分の1を乗じた率に、被保険者期間の区分に応じた支給率計算に用いる数を乗じたものを言います。
目安になりますが、
被保険者であった期間の平均標準報酬額が200,000円で厚生年金の加入期間が36ヶ月間の場合
⇒脱退一時金の支給額は660,000円になります。
最近の保険料率から逆算すると、おおよそ自分の給与から控除された厚生年金保険料の総額と同じくらいになります。
最後になりますが、脱退一時金を受け取ると、その支給額の基礎となった被保険者期間はなかったものとして取り扱われ、老齢年金等へは反映されなくなりますので、その点もご留意ください。
なお、実際の請求は、技能実習生などの方が母国に戻ってから請求するため、会社側で代行することはなかなかないようです。