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通勤災害のまとめ

      2025/04/14

○通勤災害について (4/14 大堀)

労働者の働き方が多様化するのに伴い、労働者の通勤の有り様も多様化したように感じています。通勤災害についてまとめてみます。

 

通勤災害とは、労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害又は死亡を言います。

「通勤」とは、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいいます。(業務の性質を有するものを除く)被災当日に就業することとなっていたこと、または現実に就業していたことが必要です。

(1)住居と就業の場所との間の往復

(2)就業の場所から他の就業の場所への移動

(3)住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動

 

移動の経路を「逸脱(通勤の途中で就業や通勤と関係ない目的で合理的な経路をそれること)し、又は移動を中断(通勤の経路上で通勤と関係ない行為を行うこと)」した場合には、原則、逸脱又は中断の間及びその後の移動は「通勤」とはなりません。(通勤の途中で“経路近く”の公衆便所を使用する場合や“経路上”の店でタバコやジュースを購入する等のささいな行為を行う場合は逸脱・中断として取り扱われません。)

 

これについては法律で例外が設けられており、日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合には、逸脱又は中断の間を除き、合理的な経路に復した後は再び通勤となります。

なお、厚生労働省令で定める逸脱、中断の例外となる行為は以下のとおりです。

○日常生活上必要な行為

(1)日用品の購入その他これに準ずる行為

(2)職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為

(3)選挙権の行使その他これに準ずる行為

(4)病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為

(5)要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母および兄弟姉妹並びに配偶者の父母の介護(継続的にまたは反復して行われるものに限る)

 

以下のような場合に通勤災害となるでしょうか。

◇事例1(逸脱・中断についての判断)

「被災労働者は、午後5時に勤務を終えて帰宅しようとしたが、その日は会社のマイクロバスや大型バスの洗車を行なったために空腹を覚えたので、会社の門から200メートルほど離れたところにあるB飯店で食事をし、約20分程度で同店を出て再び会社正門前までもどり、通常の通勤経路を徒歩で駅へ向かう途中、横断歩道を渡りかけていたところ、センターラインを越えて走行してきた乗用車にはねられ負傷した。

なお、被災労働者は妻帯者で、通常は自宅で夕食をとっており、会社から自宅までの通勤所要時間はおおむね20分(電車の運行間隔は約20分)である」

 

A.日常生活上必要な行為ではなく、逸脱・中断にあたり、その後の移動は通勤災害ではありません。

「被災労働者が、通勤途中において食事をとった行為は、①妻帯者であり、通常は自宅で夕食をとっていたこと、②就業の場所から住居までは片道20分程度の所要時間であり、たとえ空腹であったとしても帰宅途中に食事をとらなければならない合理的な理由がないこと、などにより、 「日用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為をやむをえない事由により行なうための最小限度のもの」には該当しない」(S.49.8.28基収2105)

 

◇事例2(合理的な経路についての判断)

「被災労働者は、妻と共稼ぎであるため、午前7時40分頃マイカーに妻を乗せて出勤する途中、自分の勤務場所を通り越し、約450m程度走行し、妻の勤務場所で妻を下車させ、再び自分の勤務先に向かって走行中、鉄道の踏切で、鉄道車両と衝突し、負傷をした。

なお、被災労働者は、通常、マイカーに妻を乗せて、妻の勤務先を経由して通勤しており、会社の構内は駐車禁止となっているため、妻の勤務先と被災労働者の事業場との中間地点に路上駐車をしている」

 

A.合理的な経路と認められ通勤災害となります。

「マイカー通勤の共稼ぎの労働者で、勤務先が同一方向にあって、しかも夫の通勤経路から、さほど離れていなければ(450メートル)、二人の通勤をマイカーの相乗りで行い、妻の勤務先を経由することは、通常行なわれることであり、このような場合は、合理的な経路として取扱うのが妥当である。」(S49.3.4基収289)

 

事案1については、男性が独身者であり、かつ経路上にある飲食店であれば認められてたかもしれません。事案2については、妻を送った理由が突発的に友人との遊びの用事であった場合や送った先が通勤とは真逆の駅であった場合では合理的な経路とはされないでしょう。

通勤災害と認められるか否かは判断が難しい場合もあり、災害が起こった場所や状況の他、本人の家庭状況にもよることがあるのが分かります。

 

○参考

□東京労働局HP

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/rousai_hoken/tuukin.html

□通達

通勤災害の取扱いについて

(昭和四八年一二月一日) (保険発第一〇五号・庁保険発第二四号)

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