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勤務地限定社員の転勤拒否による整理解雇

      2016/02/23

トムス事件 【札幌地判 2012/02/20】
原告:事務員X  /  会社(Y社)


【請求内容】
札幌から東京本社への転勤命令を拒否したため解雇された事務員Xが、解雇の無効を主張し、地位確認等を求めた。

【争  点】
事業の縮小・休止による本件解雇は有効か?(Xが勤務地限定採用社員である場合はどうか?)

【判  決】
減収により経営合理化は必要で、事業縮小による解雇はやむを得ず、勤務地限定採用社員であっても無関係とした。

【概  要】
減収による経営の合理化・効率化を迫られたY社が、札幌支店の統廃合に伴い同支店の事務職を廃止することとし、事務員Xに「会社都合で退職する」か「東京本社に転勤」のどちらかを選択するよう求めた。Xは自分が「勤務地限定採用社員」であるとして、転勤命令は受けられないと回答した。後日Xは「転勤命令の無効確認等を求める労働審判」を申し立てたが、Y社は同月30日をもって、就業規則の「事業縮小」「命令違反」の規程によりXを解雇した。

【確  認】
【整理解雇の4要素】
①人員削減の必要性(財政状態など)
②解雇回避努力(諸経費の削減や増収への努力・転勤の提案など)
③人選の合理性(懲戒歴や年齢など)
④手続きの妥当性(労働組合等との協議・説明義務など)

【勤務地限定採用】
「○○支店勤務に限る」等、地域を限定して雇用契約を締結すること。この場合、一方的に転勤命令をすることはできず、転勤させるには労働者の同意が必要とされる。また、大前提として転勤には就業規則の定めが必要である

 

【判決のポイント】

■整理解雇の要件(4要素)を満たしているか?(上記参照)
①価格競争による売上げ単価の低下や人件費上昇により減収に転じており、経営の合理化・効率化は必要であった。
②解雇をする前に「会社都合退職」か「東京本社に転勤」かという選択肢を提示していた。
③事務職を廃止する必要があり、札幌支店の事務員はXのみであったため、人選の余地はなかった。
④Xが自らを「勤務地限定採用社員」と主張するも、そのような労働契約を締結してはいなかった。しかしXが上司に「自分は地域限定採用か」とたずねたところ「そうです」と回答されていた経緯があった。この上司の発言は適切ではなかったものの、例えXが地域限定採用であったとしても、今回の事業縮小・休止等による解雇の有効性とは直接関係しないため、手続きの妥当性には影響しない。

<参考>特定事業部門の閉鎖による当該部門所属労働者の解雇が争われた例(東洋酸素事件/東京高判54.10.29)
従業員の解雇が「やむを得ない事業の都合」により有効といえるためには以下の要件を満たす必要がある。
1)企業の合理的運営上、その部門を閉鎖することはやむを得ないと認められること
2)当該部門に勤務する従業員を同一または遠隔でない他の事業所の、同一または類似職種に充てる余地がない場合または配置転換を行っても剰員の発生が避けられず、解雇が特定事業部門の閉鎖を理由に使用者の恣意によってなされるものでないこと
3)具体的な解雇対象者の選定が客観的、合理的な基準に基づくものであること

【SPCの見解】

■今回の労働者Xは結果的に勤務地限定採用ではなかったが、勤務地限定採用社員の勤務先事業所が閉鎖する場合、解雇回避努力として何をすれば良いのかという論点は重要である。この場合でも転勤命令はできないが、それでも転勤の「提案」はするべきである(解雇回避努力のひとつとして評価される)。そして、例えこの「転勤の提案」を拒否されても、それを理由に懲戒解雇することはできないため、事業所閉鎖による整理解雇が認められるように上記「整理解雇の4要素」を満たすべく、会社は尽力すべきである。解雇はトラブルとなりやすい為、可能な限りの配慮(退職金の上乗せ・再就職活動のための休暇の付与等)をし、リスクを減らすよう事前対策すべきである。

労働新聞 2012/10/22/2893号より

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