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組合費天引き廃止通告、不当労働行為の判断は

   

【請求内容】

給与から組合費を天引きするチェック・オフの廃止通告を不当労働行為とした中労委命令の取り消しを求めた。

【争点】

チェック・オフの廃止通告は支配介入の不当労働行為に該当するか?

【概要】

市が職員らで組織する組合に対し、組合費を職員給与から天引きするチェック・オフ制度を廃止する旨を通告したことが支配介入の不当労働行為に該当するとして組合らが行った救済申立に関し、中央労働委員会が、本件通告が支配介入の不当労働行為に該当すると判断して、労働委員会認定型の文書手交を命ずる再審命令をした。これを不服とする市が、再審査命令の取り消しを求めた。

 

チェック・オフとは・・・

労働組合と使用者との間の協定に基づき、使用者が組合員である労働者の賃金から組合費を控除して、それらを一括して組合に引き渡すこと。チェック・オフは組合員の利益のために行うものであるから賃金全額払いの規定の対象外であるが、労使協定が必要であると判断された判例もあるので注意が必要です。

 

【判決のポイント】

【判決】

本件通告は労働組合の弱体化、又はその活動に対する妨害といった効果をもつと評価できることから支配介入と認められる。チェック・オフの廃止を労働組合に対する支配介入に該当すると認め、市側の請求を棄却。

【SPCの見解】

【ポイント】

市はチェック・オフの必要性を以下のように述べている。

①不適切な労使関係を生み出した要因の一つである便宜供与を見直し、新たに健全、正常な労使関係を構築する必要があったこと。

②本件チェック・オフ廃止条例制定後も労使癒着の構造は払拭されるに至っておらず、労使関係適正化の要請は現に存在していること。

③すでにチェック・オフが廃止されている市職員団体に対する取り扱いと平仄を合わせる必要があったこと。

しかし、これらの目的とチェック・オフ廃止の手段との間には具体的な関連性がなく、組合らに対し、不利益を与えてもなお廃止せざるを得ないという相当な理由にはならない。

本件通告は,労使間での事前説明や調整等が一切ない状況で突然行われ,その内容も,組合ら労働組合側の個別事情を一切考慮することなく,四半世紀から半世紀にわたって継続的に行われていた組合費のチェック ・オフを1年間の猶予期間のみで廃止ないしは廃止される可能性がある状態に置くことを求めるものであり,しかも,Z1組合,Z2組合及びZ3組合については本件通告から協定の有効期間満了までわずか1か月強という,提案内容を検討し必要な調査等を行った上で結論を出すには著しく不十分な期間しか存在しない状況で行われたものであること,その説明においても,チェック・オフ廃止の必要性についての具体的な説明はされなかったことから、市の主張するところは,手続的配慮の観点からも十分な対応がされたものとはいえない。

労働協約に有効期間を定めるかどうか、また、定めるとしてそれをどの位の期間にするかは当事者の自由であり、有効期間を定める場合は最長3年となる。労働組合法では、3年をこえる有効期間を定めることはできないとしており、3年をこえる有効期間の定めをした労働協約は、3年の有効期間を定めたものとみなされる。有効期間を定めなかったときは期間の定めのない労働協約となる。期間の定めのない労働協約は当事者の一方が少なくとも90日前に署名又は記名押印した文書で予告すれば解約することができる。一定の期間を定めたもので、その期間経過後期限を定めず効力を存続する旨の定めをしたものについては、期間経過後は期間の定めのない労働協約と同様に取り扱われる。一般に労使関係は労働協約の有効期間が長ければ長いほど、長きにわたって安定するが、その反面、あまりに長すぎると経済情勢や企業経営の変化に対応できなくなることが考えられる。

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