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雇用継続への合理的期待が認められる場合とは?

      2016/02/23

NTT東日本-北海道ほか事件 【札幌地判 2012/09/05】
原告:契約社員ら3人  /  被告:会社(Y社)

【請求内容】
派遣への転籍に応じなかったとして雇止めされたことを不服として、雇用契約上の地位確認と慰謝料を請求した。

【争  点】
①原告らの転籍合意は重要な錯誤または詐欺・脅迫によるものか?②原告らに雇用継続への合理的期待があったか?

【判  決】
重要な錯誤または詐欺・脅迫があったとは認められず、また雇用継続への合理的期待も認められず請求棄却。

【概  要】
契約社員であったXら3人はY社での勤続年数5年(更新回数5回)であったが、Y社から「派遣会社に転籍し、派遣社員としてY社で勤務することに応じない場合は、期間満了により雇止めする」と説明され、Xらは転籍に同意する書面に署名捺印した。しかし後日、Xらは「雇止めは認められないのに、雇止めで脅して転籍に合意させられたことは錯誤無効または詐欺、脅迫による意思表示により取り消す」として地位確認と精神的損害への慰謝料を請求した。

【確  認】
【労働契約法(第19条)】「雇止め法理」の法定化
次の①、②のいずれかに該当する場合に、使用者が雇止めをすることが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は、雇止めが認められず、従前と同一の労働条件で有期労働契約が更新される。
① 過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの
② 労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるもの

 

【判決のポイント】

1)雇止め法理の適用はされるか?(上記「確認」の①または②にあたるか否かを検討する)
①について⇒契約更新の際には、一応「契約更新の意思確認」や「契約内容の説明」が行われており、雇用更新手続が形式的、機械的なものになっていないため、無期雇用と同視できるとはいえない。
②について⇒以下の点から合理的期待があったとはいえない。
a.業務の客観的内容(継続性の有無)・・・拠点の集約化、業務の縮小傾向により継続性ある業務とはいえない。
b.契約の臨時性の有無・・・契約社員と正社員との業務内容には相違点があった。
c.継続雇用を期待させる事業主の言動・・・長期雇用を期待させるような会社の言動はあった。
d.更新の有無・回数・・・勤続5年(更新5回)。一般的には3年を超えると合理的期待が否定しがたいとされている。
e.更新の手続きの厳格性・・・更新時の個別面談では、毎回、次回更新の約束はできないと念押しをしていた。
f.他の労働者の雇止めの有無・・・毎年数名の契約社員を雇止めしていた。
→→ 以上を総合考慮すると、(c,dのような事情はあるものの)雇止め法理の適用対象とはいえない。

2)雇止め自体の合理性  仮に雇止め(解雇権濫用)法理が適用されるとしても、業務量の大幅な変化が予想されること等から、本件派遣への転籍には一応の合理性があるといえる。またXらを単に雇止めするのではなく派遣への転換という選択肢を提示しており、この選択肢も「非合理」とはいえない。その他、労働組合との協議、社員説明会の実施、人選に不公平な点がないこと等から、雇止めを正当化する客観的で合理的な理由があったといえる。

【SPCの見解】

■本件は、「5年を超える期間、相当回数の更新を繰り返したケースにおいて雇用継続の合理的な期待なしとした点」に特徴がある。明確な基準はないが一般的に3年を超えると「合理的期待あり」とされる傾向があるためである。しかし本件のような直接雇用社員を派遣に「雇用替え」することは、改正労働者派遣法(平成24年10月1日施行)の第40条の9(離職した労働者を離職後1年以内に派遣労働者として受け入れることの禁止)にて禁止されているため、今後は違法な行為となる。また労働契約法の通達でも、5年超えの「無期転換申込権」発生を免れるために派遣や請負等に形態を偽装して、形式的に使用者を切り替えることは、「法を潜脱するもの」とされているため注意が必要である。

労働新聞 2013/3/1/2911号より

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