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65歳までの継続雇用への期待(高年齢者雇用安定法改正前)

      2016/02/23

全国青色申告会総連合事件 【東京地判 2012/07/27】
原告:労働者A  /  社団B

【請求内容】
定年後再雇用1年での雇止めは、65歳まで契約更新という慣例に反し、解雇権濫用に類似のものとして無効を主張。

【争  点】
労働者Aの65歳まで再雇用されるという期待に合理性があるか?65歳まで雇用継続という慣例があったといえるか?

【判  決】
労働者Aは再雇用制度導入後初めての定年退職者であるため、継続雇用の慣例はなく、合理的期待も認められない。

【概  要】
平成3年5月から正職員として勤務していた労働者Aは、定年(60歳)後、契約期間1年間として再雇用契約を締結したが、契約は更新されず1年後に期間満了により雇止めされた。Aは採用時の面接担当者から65歳まで働くことができるという説明があったこと等から雇止めは解雇権濫用により無効であると主張した。なお、B社団は平成18年に就業規則を改訂し再雇用制度を採用したが、採用当時(平成3年)には60歳定年制は法律上義務付けられていなかった。

【確  認】
【定年に関する法改正の経緯】
1986(昭和61)年 中高年齢者雇用促進法が「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)に改正され、60歳以上定年が努力義務化。
1998(平成10)年 4月から60歳以上定年が義務化。
2006(平成18)年 65歳未満の定年の定めをしている事業主に(1) 定年年齢の65歳までの引上げ (2) 継続雇用制度の導入 (3) 定年の定めの廃止のいずれかの導入を義務化。
2013(平成25)年 4月から「継続雇用制度」の対象者を労使協定で限定できる仕組みの廃止

 

【判決のポイント】

(※注意!)本件は高年齢者雇用安定法改正前のものであるため、今後の参考とはなりにくい部分があります。

【労働契約法】(解雇)
第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

<労働者Aの「65歳まで再雇用される」という期待に合理性があると言えない理由>
1)Aは平成18年の再雇用制度導入後に初めて定年退職を迎える正職員であった。
(つまり、65歳まで雇用されるという慣例があったとはいえない)

2)本件雇止めは更新を経ずして行われたものである。(一般的に、更新を繰り返すと期待の合理性が高まる)
3)平成3年当時、60歳定年制は未だ法律上義務付けられてはおらず、再雇用制度も存在しなかったことから、例え面接担当者が65歳まで働くことが出来る旨の説明をしたとしても、それは「60歳定年を前提に、65歳まで再雇用されることもあり得る」という意味にとどまるものと評価され、Aの65歳までの雇用継続を保障するものではない。
⇒ 再雇用制度の運用状況や過去の更新の手続き,回数等から、雇用継続の合理的な期待があったとはいえない。

【SPCの見解】

■平成25年4月1日から高年齢者雇用安定法が改正され、65歳までの継続雇用が原則となるため、改正前の判例の考え方(過去の慣例の有無など)は当てはまらない部分がある。但し、定年年齢自体を引き上げなければならないものではなく、また、平成37年3月31日までは段階的経過措置(一定年齢以降は会社独自の継続雇用基準の利用が可能)であるため、急に事態が激変する訳ではない。しかし、この経過措置を利用するためには、平成25年3月31日までに会社独自の基準についての労使協定の締結(平成18年改正時に締結したものでも良い)と、就業規則の変更が不可欠であり、これを忘れてしまうと経過措置の利用はできなくなってしまうため対応を急ぐ必要がある。

労働新聞 2013/2/4/2907号より

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