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■内部通報制度および公益通報について考える

      2016/02/21

公益通報保護法および企業に於ける内部通報制度の機能不全・未整備により、従業員の内部通報に基づき、その行為について調査・対応する機会があったにもかかわらず、それを蔑ろにしたため、結局、外部への告発につながるケースは少なくないと考えます。

ただ、制度運用を巡る課題は少なくなく、「通報というより不満や悩みの窓口となってしまっている」、「本当に保護されるのか、従業員に不安がある」、「不利益な取扱いを受けた事実の確認が難しい」や「通報しても是正されなかった」、「社内窓口に通報した事実が漏れた」といったものが挙げられております。

通報窓口を示すだけで、プロセスが曖昧であるのというのも実態であると考えます。少し異なりますが、例えば、セクシュアルハラスメントについて。セクシュアルハラスメントについて、男女雇用機会均等法に規定されている「セクハラに関し雇用管理上講ずべき措置」として、会社に相談窓口を設置しておる場合が少なくありませんが、この相談窓口についても「通報しても是正されなかった」「社内窓口に通報した事実が漏れた」という声が少なくないのというのが、私が持つ印象です。

また、個人的に気になっていることが、内部通報制度を導入していても、内部通報制度の責任者が「経営トップ(社長等)」、「取締役・執行役その他の役員(監査役又は監査役会を除く)」の2者がになっているケースが多い印象です。

「公益通報者保護法の通報対象となる法律」から考えると、その違反行為に対する罰則の有無・程度よりも、会社が社会的信用を失う可能性があれば、内部通報制度の責任者が経営トップや、取締役・執行役その他の役員では、通報者が不利益を受けるリスクは少なくないと考えます。法令違反等行為が、個人の独断に因るものであれば、その内容によっては、信用失墜行為等その他もろもろで直ちに懲戒解雇含めた懲戒処分を検討するのでしょうが、法令違反等行為が会社ぐるみである場合であれば、内部通報制度の責任者が経営トップや、取締役・執行役その他の役員では、過去、ニュースで話題になった某書店の流れは容易に考えられます。

故に、通報者が不利益を受けるリスクはゼロにならないのであれば、外部への告発を重視しなければならず、また、中小企業の場合、「中小事業主の持ち物」のイメージも強く、故に内部通報制度に期待してはならないと従業員が考えるのは自然な流れであると考えます。某書店の件が、どのような結果で終わったのかあまり興味はありませんが、外部に漏れた場合には、その時点の事実のみのイメージが、報道されない(されても小さな扱いの場合)結果については興味がなく、宜しくない印象が継続することもあり得ると考えます。

最後に、簡単に公益通報保護法にいう公益通報と認められる為の要件について簡単に振り返ってみます。
同法2条1項。
(1)事業者(事業者又はその役員、従業員等)について法令(下記ショートカット参照)違反行為が生じ、又はまさに生じようとしている旨を
(2)そこで働く労働者(正社員、パート、アルバイトなど)が
(3)不正の目的でなく
(4)次のいずれかに対し、所定の要件を満たした通報をすること
a.事業者内部
⇒労務提供先
b.行政機関
⇒当該法令違反行為について処分又は勧告等を行う権限のある行政機関
c.その他の事業者外部
⇒その者に対し当該法令違反行為を通報することがその発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者

いずれにせよ、事業継続性を考慮すれば、労使相互の信頼関係は欠かせないと考えます。

<公益通報者保護法の通報対象となる法律>
http://www.caa.go.jp/planning/koueki

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