労務相談、管理者研修、未払い残業代請求対策なら労務管理センター

■傷病手当金の支給期間について

      2016/02/21

傷病手当金の支給期間の上限は1年6ヶ月と決まっていますが、
時々問題となるのは、最初の病気が治癒し職場復帰をした後、再発して再び休業する場合の支給期間はどうなるかということです。

この場合、二つのケースがあります。

一つのケースとしては、最初の病気が治癒したあと職場復帰をして、その後また再発して休業した場合、職場復帰をした期間中に、社会的に治癒していないと判断された場合には、傷病手当金の支給期間は、最初の病気のときから通算され出勤期間も含めて1年6ヶ月経過したところで終了します。

もう一つのケースとしては、最初の病気が治癒したあと職場復帰をして、その期間中に社会的に治癒したと判断される場合は、その後同じ病気により労務不能となって休業した場合でも 後の病気は前の病気とは別の病気と認められ、次に待機期間が完成した翌日からもう一度、1年6ヶ月の傷病手当金が支給されます。

では、この「社会的に治癒した」と判断される場合とはどういうことなのでしょうか
厚生労働省の通達では、「社会的治癒とは医療を行う必要がなくなって、社会復帰していることを言う。 ただし、一般社会における労働に従事している場合であっても薬治下又は療養所内にいるときは社会的治癒とは認められない。」とされています。つまり、服薬中は社会的治癒は認められないと解釈できます。しかし一方で社会保険審査会では次のような裁定を出しています。「薬物の持続的服薬があっても、それが予防的服薬の範疇にあると認められ、かつ、健康保険の被保険者又は保険者組合の組合員として健常者と変わりのない社会生活(被用者の場合は通常の勤務に服すること)を相当期間送ってきたと判断できる場合は、社会的治癒を認めている。」となっています。

つまり社会的治癒とみなす条件として
1・症状が固定し、医療を受ける必要がない。つまり、通院をしていたり薬を飲んでいない。
※経過観察や予防的な通院であれば、医療を受けているとはならない。
2・一定期間、普通に働いていること。
※一定期間は傷病や保険者の解釈により異なる。
3・自覚症状や医師の診察でも病変や異常がないこと。

ということになります。

社会保険給付の支給に関しては、医学的な観点だけではなく全国健康保険協会または、健康保険組合である保険者が 申請書の内容やその後に保険者が集めた情報によって、同じ病気による休業かを判断し、さらに、同じ病気であれば最初の病気が社会的に治癒したと言える状態であるかを判断します。そして、対象の疾病の性格、その治癒の経過、前回受給後の就労状況等により総合的に判断されるようです。
社会的治癒が認められるかどうかはケースバイケースであり、個別の申請ごとに判断される場合が多いようです。

また、メンタルヘルス疾患で休業する場合、病名が途中で変わる場合があります。 例えば、最初はうつ病と診断されていても、後の診断では、自律神経失調症 総合失調症などと 病名が変わる場合があります。このような場合でも、後の病気の症状が、最初の症状の悪化であることが明らかであり、明らかに断絶した状況がなければ、前後の疾病は同じ疾病と扱われると思われます。

このように、社会的治癒の判断は支給期間を左右するため、繰り返し休業する社員がいる場合には、上記のような判断基準に基づいて保険者が個別の申請ごとに判断されることと伝えておくことが重要だと思います。

 -