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■男女雇用機会均等法施行規則をする省令等を含む4つの施行規則等

      2016/02/21

厚生労働省が、平成25年12月24日、男女雇用機会均等法施行規則をする省令等を含む4つの施行規則等を公布しました。施行は平成26年7月1日です。

1.雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令
2.労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針の一部を改正する件
3.事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針の一部を改正する件
4.コース等で区分した雇用管理を行うに当たって事業主が留意すべき事項に関する指針

その主な内容は、以下の通り。

1.間接差別となり得る措置の範囲の見直し≪省令の改正≫
現行省令で、コース別雇用管理における「総合職」の労働者の募集または採用に当たって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とするものは、女性に対する間接差別であるとしていたが、省令を改正し、総合職の限定を削除。
→ 総合職に限らず、すべての労働者の募集・採用、昇進、職種の変更に当たって、合理的な理由なく、転勤要件を設けることは、間接差別に該当することになる。

(注1)
間接差別とは、性別以外の事由を要件とする措置であって、他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるものとして省令で定めている措置を、合理的な理由がない場合に講じることをいう。

(注2)
現行省令で定めている、間接差別となる3つの措置は以下のとおり。
(a)労働者の募集または採用に当たって労働者の身長、体重または体力を要件とするもの。
(b)コース別雇用管理に於ける「総合職」の労働者の募集または採用に当たって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とするもの。
(c)労働者の昇進に当たって、転勤の経験があることを要件とするもの。

2.性別による差別事例の追加≪性差別指針の改正≫
性別を理由とする差別に該当するものとして、結婚していることを理由に職種の変更や定年の定めについて男女で異なる取扱いをしている事例の追加。

3.セクシュアルハラスメントの予防・事後対応の徹底等≪セクハラ指針の改正≫
(1)職場におけるセクシュアルハラスメントに、同性に対するものも含まれるものであることの明示(同性同士でもセクハラになり得る)。
(2)セクシュアルハラスメントに関する方針の明確化とその周知・啓発に当たって、その発生の原因や背景に、性別の役割分担意識に基づく言動があることも考えられる為、こうした言動をなくしていくことがセクシュアルハラスメントの防止の効果を高める上で重要であることを明示。
(3)セクシュアルハラスメントの相談対応に当たっては、その発生のおそれがある場合や該当するかどうか微妙な場合でも広く相談に応じることとして、その対象に、放置すれば就業環境を害するおそれがある場合や、性別役割分担意識に基づく言動が原因や背景となってセクシュアルハラスメントが生じるおそれがある場合などが含まれることを明示。
(4)被害者に対する事後対応の措置の例として、管理監督者または事業場内の産業保健スタッフなどによる被害者のメンタルヘルス不調への相談対応が追加されました。

4.コース等別雇用管理についての指針の制定≪コース等別雇用管理指針の制定≫
「コース等で区分した雇用管理についての留意事項」(局長通達)を、より明確な記述とした「コース等で区分した雇用管理を行うに当たって事業主が留意すべき事項に関する指針」の制定。

(注)コース別雇用管理の定義
この指針において、「コース別等雇用管理」とは、事業主が、その雇用する労働者について、労働者の職種、資格等に基づき複数のコースを設定し、コース毎に異なる募集、採用、配置、昇進、教育訓練、職種の変更等の雇用管理を行うものをいい、一定の業務内容や専門性等により、コースに類似した複数のグループを設定し、処遇についてグループ毎に異なる取り扱いを行うもの及び勤務地の限定の有無により異なる雇用管理を行うものも含まれるものである。

そ・こ・で・・・職種の一般的な解釈(会社によっては異なる定義をされている場合も少なくありません)。

<総合職>
・企業の基幹となる業務に携わる。
・組織の幹部候補にもなり得る。
・故に、転居を伴う異動アリ。

<準総合職>
・転居を伴う異動はない。
・仕事内容は総合職と大差のないケースが多い。

<一般職>
・総合職の補助的な仕事をすることが多く、事務職と呼ぶケースもある。
・一般職は昇進も限られ、住宅手当・福利厚生等で差をつけられているケースも少なくない。

総合職以外の、「募集・採用、昇進、職種の変更」に当たり、合理的な理由が無く転勤要件が設けられる場合には、それこそ組織の機能不全の予兆を疑ってしまいますが、いかがでしょう?
その一方で、「募集・採用、昇進、職種の変更」に当たり合理的な理由があれば、転勤要件が設けられるのであって、本来、転居を伴う異動について、合理的な理由を有していることは前提にあるのであって、故に、勤務地を限定する特約がなく、就業規則等に「業務上必要な場合は転勤を命じることができる」と規定されていれば、転勤命令についての包括的合意があったものとされ、その転勤命令を拒否した場合は、懲戒処分(場合によっては解雇することも可能)の対象となる、と。
結果として、総合職と一般職の賃金の一番の違いは何ぞや?と考えた場合に、明確な業務の質や量等の違いがあれば問題無いと考えますが、例えば、総合職と準総合職なんて下手したら全く同一になってしまうかもしれない。
すると、「職種の一般的な解釈」や、企業に於ける職制社内に於ける総合職、一般職の定義を見直す必要がでてくると考えます(まだ、施行まで時間が御座いますので、どんな動きがあるか注視したいところです)。
少なくとも、総合職、一般職との違いがあまりなくなるのであれば、転居を伴う異動を見越して支給されている月額のエキストラは削除したいところでしょうし、勤務地を限定する特約の無い従業員に対する就業規則等には「業務上必要な場合は転勤を命じることができる」と規定しておく必要があると考えます。
でも、主夫という言葉もそんなに珍しくない、女性経営者も少なくない時代にあって、「転居を伴う転勤に応じることができることを要件とするものは、女性に対する間接差別である」といった考え方は、少し違和感を感じることもあるかもしれませんね。

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